2017-01-01から1年間の記事一覧

Grizzly Bear / Painted Ruins

ギター・ロックにチェンバーな楽器音やエレクトロニクスを混淆させたプロダクションは、最近の作品で言えばThe National「Sleep Well Beast」に通じるが、The Nationalの生真面目で潔癖な感じと較べると、何処かストレンジで特定のエモーションへのフォーカ…

Mogwai / Every Country's Sun

幽玄でアトモスフェリックなシンセ等の装飾はあるものの、ギターにベース、ドラムが楽曲構成の根幹を担い、リズムは終始一貫して直線的で、ジャズ由来の音色や変拍子等の所謂 (要するにシカゴの)ポストロックを特徴付ける要素は皆無と言って良い。 Mogwai…

The National / Sleep Well Beast

多様なエレクトロニクスにピアノやストリングスといったクラシカルな楽器音が揺蕩う音像とリリカルなメロディはBon Iver「22, A Million」に通じるが、鼻に付くアヴァン志向は無く、ソング・ライティング自体は極めてオーセンティックなもの。 生ドラムによ…

LCD Soundsystem / American Dream

一瞬「ラムのラブソング」かと聴き紛うカウベルの連打によるイントロや、そこに被さる80’sライクなシンセ・ベースにLCD Soundsystemの帰還を実感する。 M6の導入部のアシッディなベース・ラインや4/4のキックはまるでGarage Bandのプリセットに入っているル…

Queens Of The Stone Age / Villains

マシニックなギター・リフは相変わらずだが、その耳触りの良いクリアなディストーション・サウンド(変な表現だが)や、シンセを始め、コーラスにオルガンやストリングス、チェロにサックス等の多様な音色による装飾といった豪奢でメジャーなプロダクション…

Shackleton & Vengeance Tenfold / Sferic Ghost Transmits

ガムランのような高音の連なりや長い時間を掛けて1トラックが遷り変わる展開が「Music For The Quiet Hour / The Drawbar Organ EPs」を踏襲している一方で、昨年の来日ライヴでも感じた事だが、アフリカン・パーカッションやタブラによる呪術性は相対的に薄…

Vince Staples / Big Fish Theory

クラウド・ラップとトラップはここ10年のUSヒップホップに於けるエレクトロニクス導入の最たる例だが、Vince Staplesによってヒップホップ・カルチャーとエレクトロニック・ダンス・ミュージック/テクノ・カルチャーの融合は大衆的なレベルで一旦の完成を見…

Tyler, The Creator / Scum Fuck Flower Boy

ギターやローズ・ピアノにブラス、ストリングス等の多彩な楽器音と、盟友Frank Oceanを始めとする煌びやかなシンガー達による歌のオーガニックな質感と、揺蕩うような目の粗いシンセ音等のエレクトリックな要素のプロダクション上のバランスは、James Blake…

At The Drive-In / In•Ter A•Li•A

昨年のサマーソニックでのバンドとしてのブランクを全く感じさせない鬼気迫るステージには感動すら覚えたが、復帰作となる本作もライヴの様子そのままに、「Relationship Of Command」から16年振りとはとても思えない程の初期衝動を感じさせる。 両サイドで…

Jay-Z / 4:44

M1はラッパーとしてのペルソナやパブリック・イメージをかなぐり捨てて、リアルなShawn Carterを見せ付けてやるぞという宣言なのだろうが、公共の面前で妻にラップで不貞を詫びるという行為自体がかなりセレブリティぽいし、「Kill Jay Z」というタイトルの…

Avey Tare / Eucalyptus

相変わらずエコーや効果音に塗れてはいるが、冒頭の珍しく明瞭なアコースティック・ギターの音色が変化を予感させる。 Panda Bearをチルだとすれば、Avey TareにはAnimal Collectiveの躁サイドを担ってきた印象があるが、本作のメロディは憂いさえも感じさせ…

Ryuichi Sakamoto / Async

咽頭癌からの復帰作となる本作について、坂本龍一はインタビューで死を意識した経験からの影響を語っていたが、成る程確かに今にもパトラッシュが天に召されそうなM1のパイプオルガンの響きには正にレクイエムの風情がある。 (と言い出したら氏のピアノ曲は…

Oneohtrix Point Never / Good Time

チージーなアルペジエイターやいなたいシンセ・ギター、慎ましやかではあるが時折現れる重量感のあるビートは確かに「Garden Of Delete」を踏襲しており、同作の「ハイパー・グランジ」なるコンセプトが決して一時の気の迷いではなかった事を物語っている。 …

Laurel Halo / Dust

音色自体の新奇さは薄れ、比較的オールドスクールなシンセの音色とヴォーカルの復活も手伝って、YMO「BGM」辺りに通じるテクノ・ポップ感があるが、そのアブストラクトな構造やファジーな展開はポップと呼ぶには些かエクスペリメンタル過剰で、テクノからの…

Feist / Pleasure

綻びを包み隠さず弦の震えまで聴き取れるロウで時にディストーテッドなギター、決して高音質とは言えないマイクで録音された歌声や意図的にパッケージングされたサーフェス・ノイズ、スタジオの光景が眼に浮かぶような様々な物音やフィールド・レコーディン…

Juana Molina / Halo

Juana Molinaの名前にはどうしても嘗てのアルゼンチン音響派のイメージが付き纏うが、文脈に囚われない電子音と生音のバランスや、使い古された言い方ではあるが、楽器或いは一つの音としての声の存在感にはポップに洗練される以前のJulia Holterにも通じる…

Kendrick Lamar / Damn.

M1で前作のムードを引き摺るようなストリングスが奏でる物憂げな主旋律を引き裂く銃声は、恰も「To Pimp A Butterfly」を無効化せんとする宣言かのようだ。 続くM2ではトラップの唸るサブベースと高速ハイハットに、後半のそれこそマシンガンのようなヴォー…

Bonobo / Migration

何とロマンティックなオープニングだろうか。 ジャズとエレクトロニック・ミュージックのバランスはFloating Points「Elaenia」を彷彿とさせるが、ピアノやストリングス等の生楽器と電子ノイズやシンセ・シーケンスが混濁した幽玄な音像は「Elaenia」の驚異…

Demdike Stare / Wonderland

Andy Stottと共にインダストリアル・リヴァイヴァルを牽引したDemdike Stareの名前から連想するホラーなイメージとは対照的な、まるで北欧のコズミック・ディスコ作品にありそうな小洒落たデザインのジャケットと呼応するように、サウンドもまた一時代のフェ…

Actress / AZD

金属的な電子音が無作為に転げ回るイントロは、例えばAutechre「Confield」の冒頭を思い起こさせるという意味で如何にもエレクトロニカ的で、M2等のボトムの軽いイーヴンキックはクリック/マイクロ・ハウスを想起させるし、ヴィブラフォンにも似た音色とノ…

Arca / Arca

ここ数年頻繁に使われる「OPN/Arca以降」いうタームには、両者のサウンドに余り共通項が見出せないが故に違和感があったが、緊張感漲るM1のフィードバック・ノイズやドローンと聖歌の如きレイヤーには、確かに「R Plus Seven」に通じる感覚がある。 それは…

Dirty Projectors / Dirty Projectors

M1の円熟味を帯びたDavid Longstrethの歌声、そこに彩りを加えるのは嘗てのAmber CoffmanとAngel Deradoorianの流麗なコーラスではなく、Tyondai Braxtonによる極端に変調された声で、恋人に去られた男の傍らに寄り添うのが近しい友人だったというのは何とも…

The XX / I See You

らしくないホーンのファンファーレによる高らかな幕開けがバンドの変化を告げている。 これまでは同じトラック内に同居していても、交互にヴォーカルを取って余り交わる事の無かった2人のヴォーカリストのデュエットが劇的に増して、囁くようだったヴォーカ…

10 Best Albums Of 2016

1. Beyoncé / Lemonade 2. Solange / A Seat At The Table 2. A Tribe Called Quest / We Got It From Here…Thank You 4 Your Service 4. James Blake / The Colour In Anything 5. Anderson .Paak / Malibu 6. Kendrick Lamar / Untitled Unmastered. 7. Sc…

Run The Jewels / Run The Jewels 3

前作から大きな変化は無いが、いなたいエレクトリック・ギターはやや減り、ウォブル・ベースを始めとしたエレクトリックな音色が比重を増して、相対的にサンプリングの存在感は薄まった。 そのクリアでハイファイなサウンドに、最早1997年にCompany Flowが醸…

Sampha / Process

DrakeやKanye West、SolangeといったメジャーのUSヒップホップ/R&Bからのフックアップに、ダブステップ以降の歌うプロデューサー、またはシンガー&トラックメイカーというスタイル(ここに最近ではArcaが加わった訳だ)、コンポジションの核にピアノ(歌詞…

Thundercat / Drunk

スローナンバー中心の「The Beyond / Where The Giants Roam」では気付かなかったが、ドラム・マシンのチープなビートをフィーチャーしたM2や超絶技巧のエレクトリック・ベースが疾走するM3からは、成る程即座に「フュージョン」という単語が想起される。 そ…

Solange / A Seat At The Table

2016年は結局最後までBeyoncéの年だった。 「Lemonade」という、ある黒人女性の苦悩と救済、そして続いていく日常の物語の後での、双子の妊娠と大きなお腹を抱えての神々しいまでのグラミーでのパフォーマンス、それでもまた訪れる黒人女性が故の失意とAdele…

Pangaea / In Drum Play

2015年のPearson Soundに続くHessle Audioクルーによるファースト・フルレングス第2弾は、Pearson Soundのアヴァン志向とは異なり、テクノ寄りのベース・ミュージックという従来のレーベル・カラーに近い作風になっている。 またもや遅れてきたポスト・ダブ…

Danny Brown / Atrocity Exhibition

何を置いても先ずは狂気を感じさせる、或いは演じているような上擦った声に意識は向かう。 それはリミッターを振り切ったSchoolboy Qのよう、若しくはラリったAd-Rockのようでもある。 Kendrick LamarやAb-Soulがゲストに招かれて、Schoolboy Qが呼ばれてな…