The Mars Volta / The Mars Volta

初めて本作を聴いたのが、本当にたまたまSteely Danの本(「Reelin' In The Years」)を読んでいた正にその最中だったので、その変わりように尚更吃驚した。
本人達の念頭にあったのはThe Style Councilだそうだが、変拍子ディストーションも皆無のブルー・アイド・ソウルソフト・ロックサウンドも然る事ながら、2人のコア・メンバーが名うてのプレイヤー達を(言い方が悪いが)使い捨てるバンドの構図もまんまSteely Danではないか。

過去には「Octahedron」がポップをコンセプトに制作されたとの事だが(一体何処が?)、そのようなアイデアや概念的なレベルではなく、OmarとCedricの2人が本気でポップスに取り組んでいる様子が良く伝わってくる。
Pink Floyd「The Piper At The Gates Of Dawn」への憧憬から始まったバンドにしては驚く事に、何せ4分を超える曲が殆ど無いのだ。

とは言え基本的なソング・ライティングはマイナー・コードを好むOmar Rodríguez-Lópezの従来のそれから大きな飛躍がある訳ではなく、特にM2やM12なんかはギターがクリア・トーンに変わっただけのように感じられ然して面白味は無い。
寧ろ10CCみたいな気怠くレイドバックしたエキゾティックなAOR風のM3やM13、牧歌的で何処かオプティミスティックなM5といった、従来のイメージとの乖離が大きい楽曲程興味を唆られる。

M10は比較的ストレートなロックの部類に入るが、彼等のルーツであるパンク/ハードコアと言うよりは寧ろニューウェイヴ風で新鮮味が無くもない。
M6のアフロ・キューバン風は嘗てのDe Factoの作風を思い起こさせるが、インタールード的でごく短い。
At The Drive-InThe Mars Voltaの棲み分けもすっきりとしたところで、De Factoも再始動したりなんかすると、今なら案外楽しめるかも知れないなと思ったりもした。