2023-01-01から1年間の記事一覧

Animal Collective / Isn't It Now?

D'Angelo「Voodoo」を手掛けたRussell Elevadoの手による完全アナログ・レコーディングの産物であるオーガニックな音像が、「Here Come The Indian」以来に思えるある意味ローファイと言える感覚を齎しているが、単純なアマチュアリズムやエクスペリメンタリ…

The Rolling Stones / Hackney Diamonds

Mick Jaggerのヴォーカルが位相の中心にどっしりと据えられており、その年齢を感じさせないパワフルで安定感のある歌唱が、このアルバムの比較的高い評価に繋がっているものと思われるが、不謹慎だと解っていながらどうしても老人のドーピングといったイメー…

Wilco / Cousin

16ビートを刻む電子的なクリック音と遠い響きのフィードバック・ノイズに始まり、中盤でシンセ・ブラス風の奇妙な音色が合流するM1には、如何にもCate Le Bonらしいストレンジ・ポップの要素が満載だが、一方Jeff Tweedyのウェッティなメロディもオーソド…

Jamila Woods / Water Made Us

少し単純化し過ぎかも知れないが、恋愛の始まりから終わりまでの感情の移ろいがテーマとの事で、確かにM2やM3には出逢いの時期の浮き浮きとしたムードが巧く表現されている。言葉にすると実に陳腐な感じがして恥ずかしい事この上無く、また別に良い歳をして…

Loraine James / Gentle Confrontation

James Blakeがその素顔を晒したジャケットのアルバムは駄作で、その逆もまた然りという法則は近作「Playing Robots Into Heaven」でもまた正しい事が証明されただけに、このジャケットには嫌な予感しかしなかった。Whatever The Weather名義の日本公演で見た…

Jorja Smith / Falling Or Flying

J Husの近作にJorja Smithがフィーチャーされていたのはやや意外に思ったが、J Hus側からの一方的なアプローチという訳でもなかったようで、本作では逆にJorja SmithがJ Husを招いており、M1、M2と続くパーカッシヴでポリリズミックなビートからも、生存戦略…

Kylie Minogue / Tension

まさか自分がKylie Minogueのアルバムに手を伸ばす事になるとは思いも寄らなかったし、当然これまでにその声を意識して聴く機会等無かった訳だが、Grimesと聴き紛う程の55歳だとは俄かには信じられないその若々しさに吃驚させられる。当然相当に補正されて…

Mitski / The Land Is Inhospitable And So Are We

前作「Laurel Hell」に於ける80’sマナーのポップ路線とは打って変わって、フォークやアメリカーナに舵を切った作品と言って差し支え無いだろう。評価の高さはリリックに多くを依っているようではあるが、やはりアメリカーナには欧米人の心を擽る何かがあるの…

Romy / Mid Air

ギターという楽器のイメージでしかないが、勝手にThe XXのインディ・ロックの要素はRomyが源泉だとばかり思い込んでいた。それだけに彼女がギターを排し、徹底して4/4のビートのストレートなハウス/ダンス・ポップに取り組んだ、しかもそれがOliver Simはお…

Róisín Murphy / Hit Parade

ファンキーな前作に大いに魅了されただけに、冒頭のトリップ・ホップ風の慎重な入り方に一瞬不安を覚えたが、すぐにDJ Koze特有の空間が歪曲するようなベース・ラインがインサートされ、途端に安堵感を覚える。「Róisín Machine」の強烈なファンク臭は薄れた…

Dinner Party / Enigmatic Society

幽玄で抒情的なRobert Glasperのピアノに静かに熱を帯びたKamasi Washingtonのテナー・サックスが絡むM1が先ずは白眉。ノンビートでTerrace Martinと9th Wonderは蚊帳の外なだけに、アルバムの中では少し特殊な立ち位置のイントロ的な楽曲だが、この1曲に留…

Sleaford Mods / UK Grim

M1の寒々しいエレクトロ・パンク/インダストリアルからは、前作「Spare Ribs」が彼等にしては比較的ポップな作品であったというのが良く解る。全編を通じてメロディ要素は皆無とまでは言わないものの極めて稀薄で、その冗長さは確かにCabaret VoltaireやThr…

James Blake / Playing Robots Into Heaven

原点回帰に諸手を挙げて燥ぐのはどうも不粋な感じがしてしまってつい躊躇してしまうが、M4やM7等のBurial直系のゴーストリーなガラージやピッチ・シフトで変調されたヴォーカル・チョップといった、James Blakeが期待され、且つ早々に捨象してしまった要素が…

Noname / Sundial

全編に渡ってM11にも参加しているCommonの「A Beautiful Revolution」或いは「To Pimp A Butterfly」に近いリリカルなジャズ・ヒップホップが展開されており、控え目に言っても佳曲だらけ。特に80’s後半から90’s初頭のミドル・スクールを思わせるリニアで疾…

J Hus / Beautiful And Brutal Yard

シアトリカルなストリングスがギャングスタ・ラップ風のイントロは、確かに土着的なイメージを喚起するホーンやパーカッションといった要素もあるものの、正直UKドリルとどう違うのか良く判らず、何処からをアフロ・ビーツ/アフロ・スウィングと呼べば良い…

Christine And The Queens / Paranoïa, Angels, True Love

前作「Chris」にはもうちょっとアッパーな印象があったが、本作は一転して抑制されたムードで統一されている。M2後半にはノイジーなブレイク・ビーツも登場するが、決してダンス・フロア向けではなく寧ろインダストリアル風で、A. G. Cookが手掛けたM8のチー…

Meshell Ndegeocello / The Omnichord Real Book

ジャズやファンク、アフリカン・フォークやアフロ・ビートの要素に加えて、シンセやクワイアによるアンビエンスを時に過剰なエフェクトで混濁させたような音像はある種ダブ的で、グルーヴィでアーシーであるにも関わらず同時に全編を通じて幻想的な浮遊感が…

The Hives / The Death Of Randy Fitzsimmons

2000年代初めのガレージ・ロック・リヴァイヴァルを聴かず嫌いしたせいで、The Strokes「Is This It」に出会うのが遅れたという個人的な反省もあって先入観を振り払って聴いてみたものの、やっぱり吃驚するくらい駄目。エレクトロニカ/ポスト・ロックの反動…

Janelle Monáe / The Age Of Pleasure

冒頭のトラップのビートとシンギング・ラップ風は確かに前作「Dirty Computer」にもあった作風ではあり驚きこそ無いけれど、あれから5年が経過している事を踏まえると流石にアウト・オブ・デートな感は否めず、折角のEgypt 80の参加も台無しに感じられたが…

Mahalia / IRL

アルバム冒頭のドリーミーで浮遊感溢れる音像やパトワ風の節回しから、SZAに対するイギリスからの回答といったイメージが湧き起こる。サポート役のラッパーもStormzyにKojey Radicalと、まるでイギリス代表のMahaliaを応援するかのような客演だが、Stormzyに…

Jessy Lanza / Love Hallucination

M1はBPM130くらいのアップテンポなイーヴン・キックにオールド・スクールなシンセ・ベースとピアノの音色で構成されたシンプルなハウス。続いてUKガラージ/2ステップのビートを援用したM2、ちょっとバブルガム・ポップ風のM3と乗っけからアップリフティング…

Gorillaz / Cracker Island

オープニングはシンプルだが腰に来るThundercatのグルーヴィなベースとカッティング・ギターが絡むファンク・チューン。ここ数作に引き続きシンセ・ポップを基調としつつ、前作「Song Machine / Season One」のポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ色に対して、…

Blur / The Ballad Of Darren

Blurの新譜を聴くという行為が実に1995年の「The Great Escape」以来の事で、その後にBlurというバンドが辿った紆余曲折を全く知らないが故に、さぞかし当時のイメージとは違うサウンドが展開されているのだろうと予想していたが、蓋を開けると意外な程にイ…

Anohni And The Johnsons / My Back Was A Bridge For You To Cross

クリア・トーンのギターを軸にストリングスにサックス、ピアノやヴィブラフォン等の多彩な器楽音で補強されたサウンドは、Marvin Gaye「What’s Going On」にインスパイアされたという前評判の通りAnohniによるブルー・アイド・ソウルと呼ぶに相応しく、元よ…

PJ Harvey / I Inside The Old Year Dying

何処か悪戯っぽいというか、奔放さやイノセンスにほんの少し狂気が入り混じったような発声が内包する少女性に先ずは驚かされる。その印象は所謂円熟とは真逆で、若い頃はそれほど気に留める事が無かったが実に魅力的である。特段大きな綻びがある訳ではない…

Tim Hecker / No Highs

2000年代の後半にノンビートのエレクトロニック・ミュージックがかつて無くポップ・フィールドに躍進した際、それが単純にアンビエントとは呼ばれずに「/ドローン」という注釈が付されたのは、勿論原義通りの通奏低音を伴うという特徴を有していた事もあろ…

Sparks / The Girl Is Crying In Her Latte

冒頭を飾るチープな低周波の電子ノイズが古い映画に出てくる電気ショックを連想させ、早くもイメージ通りのナンセンスが全開。アルバムの所々で現れる、一般的には荘厳とか流麗といったオーセンシティを強化する方向に働く筈のオーケストレーションも、逆方…

Foo Fighters / But Here We Are

Foo Fighters史上で最も過剰なディストーションを伴うM10に唯一レクイエムめいた感傷を感じなくはないものの、気恥ずかしさを覚えるヒロイックなタイトルの割に全体としては然程仰々しさは無く、シンプルで意外にも落ち着いていて何処か清々しさすら感じさせ…

Sbtrkt / The Rat Road

昨年のSantigoldのアルバムで久々にその名を目にしたSbtrktの待望の復活作。 ポスト・ダブステップの中でも一際ポップで享楽的でありつつ、Ruskoなんかのブロステップとは違って品のあるダンス・トラックを得意としていただけに、嘗てのコラボレーターである…

Jessie Ware / That! Feels Good!

Beyoncé「Renaissance」がJessie Wareの競争心に火を点けた、なんて事は先ず無いだろうけれども、自分こそが現代のDonna Summerだと言わんばかりに前作にも増して徹頭徹尾ディスコを前面に押し出した内容で、M2等には正に2023年の「Hot Stuff」といった感じ…