2016-01-01から1年間の記事一覧

Bon Iver / 22, A Million

グリッチーなノイズやドローン的な持続音、過剰なエフェクト処理にヴォーカル・チョップ等々、エレクトロニクスの比重が格段に増大している。 特にオートチューンによるヴォーカルの変調は全編を通じて本作を特徴付けており、M3の独唱はあからさまなまでにJa…

Zomby / Ultra

些か大仰な低音のシンセによるディストピックなオープニングが、Kode9 & The Spaceape「Memories Of The Future」と同質の感覚を喚起させ、一気に気分が2006年にタイムスリップする。 奇しくもZombyのHyperdub復帰作となった本作だが、当時と違っているのは…

Factory Floor / 25 25

30年前から殆ど変わらないであろうアシッディなベースラインやクラップ、カウベル等のドラムマシンが発する音の数々からは相変わらず進化や未来に対する徹底的に醒めたヴィジョンが伝わってくる。 但し二ヒリスティックな彼等であっても前作と同じような作品…

Dinosaur Jr / Give A Glimpse Of What Yer Not

M1の快活なギター・カッティングやドラムの疾走感は聴きようによってはまるでFoo Fightersのようではないか。 音響はクリアに整頓され、J Mascisのヴォーカルもいつになく安定しており、プロダクション全体に何処となくメジャー感が漂っている。 Murph曰く「…

The Avalanches / Wildflower

「Since I Left You」という作品は、Beastie Boysが基盤を作り、Beck「Odelay」で一つの完成を見た、90's後期オルタナティヴに於けるヒップホップから盗用されたサンプリングの手法と他ジャンルの結合というトレンドの最高到達点であったが、16年の歳月を経…

Babyfather / BBF Hosted By DJ Escrow

物悲しいクラシックギターの旋律に乗せて延々ループする「This Makes Be Proud To Be British」というアイロニカルな言葉...。 イギリスがEU離脱を決めた国民選挙が6月で、本作のリリースは4月なので、そこに関係がある筈は無いのだが、余りのタイムリーさに…

Schoolboy Q / Blank Face LP

ギャングスタ然としたナスティなラップはコンプトンの英雄となったGood Kidとの対比を強調するようでもあり、言われてみると確かに粘着質なエレクトリック・ギターのチョーキングが些か鬱陶しいM1や、ロック風のヘヴィなリフとトラップ由来の高速ハイハット…

James Blake / The Colour In Anything

オープニング・トラックの中盤に現れる不安定に揺らぎながら上昇する倍音を多く含んだ独特のシンセ音の鮮烈さから、「Sparing The Horse」「Unluck」を聴いた際と同質の興奮が呼び起こされる。 志は高いが巧く像を結ばず、結果散漫で混迷を感じさせた前作の…

Gold Panda / Good Luck And Do Your Best

M1のグリッチや女声のヴォーカル・チョップはFour Tet「There Is Love In You」を思い起こさせ、フォーキーでややエキゾティシズムを漂わせるM6はWechsel Garlandを彷彿とさせる。 ストリングスやアコースティック・ギターに各種鍵盤打楽器等の可憐で儚げな…

Beyoncé / Lemonade

シンセベースとユニゾンのエキセントリックなイントロから特有の倍音を含み揺らぐオルガンによるM1のゴスペルは確かに「The Colour In Anything」と同質のオープニングで、James Blakeの存在感を強く感じると同時に、これから始まる稀代のポップ・スターの冒…

Julianna Barwick / Will

ループペダルで自身の声をレイヤーする手法の印象が強いJulianna Barwickだが、本作ではピアノやチェロを筆頭に、声以外の音色が多用されている。 シンセ一つ取っても、繊細にその音響を変容させながら揺蕩うものから、倍音多く含み歪んだパイプオルガンのよ…

Radiohead / A Moon Shaped Pool

先ず何よりもJonny Greenwoodの課外活動を反映した、ストリングスの大胆な導入によるバロック・ポップへのアプローチは特筆すべき点あろう。 前作のリファレンス・ポイントがUKベース・ミュージックにあった事を思い起こせば、Bjorkとまるで同じ軌道を辿って…

Kendrick Lamar / Untitled Unmastered.

冒頭のウッドベースにスポークンワード、全編を彩るピアノやサックスの音色は「To Pimp A Butterfly」との連続性を確信させるに充分だし、クレジットに記載は無いがM5のエレクトリック・ベースはThundercatによるものだとしか思えない。 同時期に録音された…

Mala / Mirrors

先ず前作をも凌駕するリズムの多様性に唸らされる。 M1やM3こそオリジナル・ダブステップ・マナーの1/4のビートだが、M2のシンコペートするパーカッションとサブベースが織り成すポリリズムや、M4の旧来のエレクトロニック・ミュージックにはなかなか無い変…

Anohni / Hopelessness

本作はAntony Hegartyのバロック・ポップとエレクトロニック・ミュージックの遭遇であると同時に、Daniel LopatinとHudson Mohawkeの出会いとしても興味深い。 クレジット上2人の連名は2曲しかないが、実際にはプロデューサーがLopatin名義のトラックでもHud…

Tim Hecker / Love Streams

持続と反復を基調とした初期OPNやEmeraldsの音楽とは異なりエレクトロ・アコースティック的なランダムネスがあり、強烈なグリッチ等のノイズの存在感とアタックや残響への細やかな加工の痕跡からは音響に対する相当な執念を感じさせる。 音そのものがこれほ…

Brian Eno / The Ship

Aphex Twin「Selected Ambient Works Volume II」に出会った頃には自分がこれほど頻繁なアンビエントのリスナーになるとは考えてもみなかった。 エレクトロニカの時代にはFennesz等の「Editions」が付く前のMegoのリリースやMouse On Mars周辺のOval等による…

Matmos / Ultimate Care II

注水の音に続く、まるでアフリカン・パーカッションのアンサンブルか一時期のBoredomsようなトライバルなビートは間違いなく洗いの工程を、それに続くアブストラクトな電子音響は排水の工程を表現したもので、以降もアルバムは洗濯機の工程を忠実に再現し続…

Laurel Halo / In Situ

基本的には前作を踏襲するストラクチュアルなテクノで構成されているが、変則的でありながら明確なビートを基調としていた前作に比べて、ベースやスネアの役割は弱体化し、アブストラクトさを増した印象を受ける。 M2等に至っては、定期的に打たれるキックや…

10 Best Albums Of 2015

1. Kamasi Washington / The Epic 2. Floating Points / Elaenia 3. Julia Holter / Have You In My Wilderness 4. Kendrick Lamar / To Pimp A Butterfly 5. Deerhunter / Fading Frontier 6. Jamie XX / In Colour 7. Oneohtrix Point Never / Garden Of D…

Rustie / Evenifudontbelieve

リバース・ディレイの掛かったエレクトリック・ギターの音色で幕を開け、初期OPNやEmeraldsに通じるシンセ・アンビエントの終盤に、雨音や雷鳴、風がマイクを吹き付ける音等が挿入されるM1は、そのニューエイジ臭によってRustie新展開を予感させる。 しかし…

Thundercat / The Beyond / Where The Giants Roam

所々でFlying Lotus「You're Dead」に類似したベースやヴォーカルのフレーズが散見され、メロディ上でも深遠なムードの面でも同作に於けるThundercatの役割の大きさが伺える。 とは言えパンキッシュな高速スラップベースは皆無で、サーフェスノイズやヒスノ…

Neon Indian / Vega Intl. Night School

チルウェイヴをまともに通過していないので実際のところは良く判らないが、ディスコティックで粘着質な腰に来るシンセ・ベースや、ブギーファンクにも通じるスペーシーな上モノ等、これほどブラック・ミュージックからの影響を前面に押し出したチルウェイヴ…

Anderson .Paak / Malibu

Dr. Dre「Compton」で見せた、荒々しく扇情的なラップとは実に対照的なメロウでソフトな歌声に、些か積もりに積もった期待感が肩透かしを喰らう。 時折挟むMichael Jacksonばりのアッとかフッとかいう掛け声に掛けられた不自然なエコー処理がフリーキーでは…

Arca / Mutant

複雑に蠢く電子音響や耳を劈くハーシュノイズ、ブレイクコアのような痙攣的な低音は、例えば一昔前のRichard Devineのエレクトロ・アコースティック等を思い出させる。 1トラックとしての纏まりは希薄で、キックやスネアはリズムを刻む役割よりも寧ろ装飾音…

Kode9 / Nothing

ディストピックなファンファーレのようなイントロのM1や、続くM2のその重要なインスピレーション源の一つであるKevin Martinを思わせる可聴域ぎりぎりで唸る強烈な重低音は如何にもSteve Goodmanらしいが、満を持して導入されるM3のビートは、移り気なKode9…

Julia Holter / Have You In My Wilderness

前作ですっかりバロック・ポップのスターにのし上がった稀代の才女は、本作でポップ・シンガー/ソングライターとしての成熟度を更に高めている。 初期の宅録女子によるアンビエント/ドローンからは隔世の感を禁じ得ないが、やはり一切のセルアウトを感じさ…

Oneohtrix Point Never / Garden Of Delete

聖俗が混濁した前作から俗の部分を抽出・培養したような内容で、「Replica」では短くカットアップされ、その全容を顕にすることのなかったループを構成するマテリアルは、本作で最早ゴミであることを隠そうとはせず、寧ろ積極的にチープネスを強調するようと…

Joanna Newsom / Divers

基本的には新しいアイデアやコンセプトに寄った作品ではなく、多彩な器楽音が入れ替わり立ち替わりに現れるM1、M2等は前作を踏襲するバロック・ポップだが、その後のほぼ交互にハープとピアノがリードを交代しながら同時に周辺の装飾音のユニークさを際立た…

Floating Points / Elaenia

2015年は嘗てポスト・ダブステップと呼ばれたシーンにとって総仕上げの年となった。 フルレングスを待望され続けた3人 - Untold(これは2014年だが)、Pearson Sound、そしてFloating Points - が方向性は三者三様なれど、いずれもガラージからもベース・ミ…