2019-01-01から1年間の記事一覧

(Sandy) Alex G / House Of Sugar

今や当たり前過ぎて言及される事も殆ど無い、宅録という言葉を久々に思い出す。最早自宅どころか、MadlibやSteve LacyのようにiPadやスマートフォンで楽曲が制作される時代に於けるその宅録感とはつまり、メソッド云々というよりもその音楽の醸出する孤独で…

Lana Del Rey / Norman Fucking Rockwell!

サウンド的にはやはりCat Powerや最近のFeistに通じるインディ・ポップ/フォークで、サッドコアと聞いて想像する範囲内ではある。M5のブレイクビーツは少しPortisheadみたいだし、長ければ即ち実験的という訳ではないものの、長尺のM3等からも少なくともラ…

Sleater-Kinney / The Center Won't Hold

エレクトリックなプロダクションやニューウェイヴィなアレンジメントからは濃厚なSt. Vincentの存在感が漂っており、お飾りのプロデューサーではなくかなり強力なクリエイティヴ・コントロールが与えられた、しっかりとしたコラボレーションであるのが窺える…

Freddie Gibbs & Madlib / Bandana

何を置いても先ずオープニングのジャパニーズ・イングリッシュの笑撃は捨て置けない。日本人には「モヤモヤさまぁ~ず」のナレーションでお馴染みのその音声は(つぶやきシローだとばかり思っていたが)、Hoyaが商業用に開発したVoiceTextという音声合成ソフ…

Bill Callahan / Shepherd In A Sheepskin Vest

冒頭、テープのヒスノイズ混じりのローファイな音像にLou BarlowのSentridohを思い出す。勿論聴き進むに連れて余程ちゃんと(?)している事は解ってくるのだけど、ボトムが効いたジェントリーな歌声も何処か似ている。微かに心地良く歪んだその魅力的な声は…

Thom Yorke / Anima

ベース・ミュージックやIDMを基盤としているという点では「The Eraser」(もう13年も前!)の続編といった印象で、より熟れて洗練された感はあるものの基本路線は変わらず、Thom Yorkeの新作と聞いて想像する範囲内のサウンドであるのは間違いない。Burialの…

Steve Lacy / Apollo XXI

洒脱なメロディからはやはりSteve LacyがThe Internetのソングライティングの核である事が解るが、The Internetと較べるとより音数も装飾も少なく、シンプルでコーラスの効いたロウなギターの音が基軸を担っている。GarageBandで制作されたビートは宅録感に…

Kelsey Lu / Blood

もっとR&B寄りのサウンドを予想していたが、ジャズとチェンバー・ミュージックとエレクトロニカとモダン・クラシカルとアヴァンギャルドをポップにコーティングしたようなサウンドを総合して、行き着いたイメージが最も近いのがUaというのに些か驚いた(M5や…

Tyler, The Creator / Igor

ウォブリーなシンセに続いて耳に飛び込むヴォーカル・チョップ混じりのファットなブレイクビーツはまるでDJ Shadowのようで90’s育ちには堪らない。M2のスネア等には未だトラップっぽさの残滓が聴き取れるものの、生ドラムのビートへの揺り戻しはLittle Simz…

Flying Lotus / Flamagra

「1983」や「Los Angeles」を彷彿とさせるM1のシャッフルするビートが待望のFlying Lotusの帰還を告げている。タイトルもジャケットもその世界観を踏襲してはいるが、その高揚感から自分が「You're Dead!」の過剰な混沌やアヴァンギャルディズムに関心はしつ…

Solange / When I Get Home

エレクトリック・ピアノやシンセ・ベースの柔らかな音響は引き続き、スローでチルでドリーミーな感覚は前作以上。ホーム=アトランタがテーマという事で、流石に音から直接ブラック・カウガールのイメージが喚起される訳ではないものの、トラップやスクリュ…

10 Best Albums Of 2018

1. Blood Orange / Negro Swan2. Oneohtrix Point Never / Age Of3. Stephen Malkmus And The Jicks / Sparkle Hard4. Julia Holter / Aviary5. Janelle Monáe / Dirty Computer6. Kali Uchis / Isolation7. The Internet / Hive Mind 8. Kamasi Washington …

Marianne Faithfull / Negative Capability

M2のNick Caveとのデュエットは、Patty Smithが歌うR.E.M.「E-Bow The Letter」を彷彿とさせるというだけで何となく絆されてしまうし、続く「As Tears Go By」も(単に耳馴染みがあるというだけだが)決して悪くはないが、M4の退屈でしみったれたフォーク・…

Sharon Van Etten / Remind Me Tomorrow

Bon IverやThe National界隈の人というイメージを持っていただけに、アタックの強いドラム音や微かにThe Cureに通じるような少しゴスの入ったニューウェイヴといった感じのサウンドには些か意外性があった。旧作は未聴で、どの程度の変化があるのか見当が付…

Eli Keszler / Stadium

淡いアナログ・シンセやエレピと高速ドラミングにコントラバス等の音色の組み合わせがAtom HeartとBurnt FriedmanによるFlangerを思い起こさせる。深遠で静謐なムードはWechsel Garlandを、特定のエモーションを忌避するようなメロディは竹村延和と言うよりC…

Vampire Weekend / Father Of The Bride

ポリティカルなバンドが能天気な程に明るく驚く程高性能ポップに振り切れた。M2の跳ねたピアノやパーカッション、M15やM16に於ける女声ヴォーカルとのデュエットは、有ろう事かディズニー映画の劇中歌に使われても良さそうで、商業的なプロフェッショナリズ…

Weyes Blood / Titanic Rising

元Jackie-O Motherfuckerのベーシストという肩書が俄かには信じ難い程ポップ。そのKaren Carpenterを彷彿とさせる歌声を一種のジョークと捉えればAriel Pinkと繋がるのも解らなくはないが、殊更ローファイさを売りにするような身振りはまるで無く、少なくと…

Little Simz / Grey Area

ブーストで歪んだベースに仄かにダビーで渇いたスネア、エキセントリックなストリングスに、最高にクールでありながらアグレッシブなラップが躍動するM1が先ずは白眉。続くM2の密室的で埃っぽい音像もやはりドープで、後半に挿入される上昇するシンセも面白…

Anderson .Paak / Oxnard

ブラックスプロイテーション映画風のオープニングの、スムースでありながら滾る熱を内に秘めたようなクールなラップが早速気分を高揚させる。(ジャケットと言いトラック間のスキットと言い、ブラックスプロイテーションを模した造りは本作のコンセプトの一…

Jeff Tweedy / Warm

アコースティック・ギターを基軸としてそこにドラムやベースが自己主張する事なく淡々と寄り添う。 強いて挙げるとすればスライドギターの音が特徴的で、慎ましやかだが僅かに彩りを付け加えている。スライドギターで思い出すのは坂本慎太郎「ナマで踊ろう」…

Kids See Ghosts / Kids See Ghosts

2018年のKanye West関連作 - Pusha T「Daytona」と自身の「Ye」そして本作 - はどれも収録時間が30分未満とごく短く、Kanye Westが何らかのコンセプトの下でそのようなアルバムを連発している事は疑いようがない。全て7曲で3作合わせて漸くCD1枚分という…

Earl Sweatshirt / Some Rap Songs

チリノイズで充満したサンプリング・ソースを極めてルーズに繋ぎ、投げやりにループした歪でローファイなビートは否応無くMadlibを思わせるが、同じように煙たくはあってもMadlibのビートはここまで空虚ではないし、もっとファンクネスもある。M2の継ぎ接ぎ…

Cat Power / Wanderer

近年は様々なレンジのスタイルを採り入れていた印象があったが、本作では原点回帰を標榜したかのような、全編ギターとピアノによるシンプルなフォーク/ロックを展開している。とは言え初期の特徴であったパンクの要素は見当たらず、子供が映り込んだジャケ…

Deerhunter / Why Hasn't Everything Already Disappeared?

冒頭のハープシコードに始まりこれまでのDeerhunterの作品の中で最も鍵盤楽器類の存在感が際立っている。レトロ・フューチャー感満載のシンセとマリンバによるラウンジ調が「Moon Safari」の頃のAirみたいなM3等、特にシンセ使いは特徴的だが、「Fading Fron…

James Blake / Assume Form

アルバムはUSのブラック・ミュージック界隈で引っ張り凧の現況を反映している。Metro Boominと組んでそれぞれ(「Astroworld」に於ける客演へのお返しとばかりの)Travis ScottとMoses Sumney(James Blakeのカバーを契機にキャリアが始まったMoses Sumneyに…

Travis Scott / Astroworld

シングル・ヒットしたM3のアンセミックなイントロには流石に惹き付けられるものがあるし、M7の如何にもTame Impalaなオープニングには昂揚感もあるが、以降ジャジーなビートが異質なラストM17まではトラックのヴァリエーションも乏しいし、然したるフックも…

Tim Hecker / Konoyo

最近改めて「Virgins」を聴いて冒頭の音が余りに本作のオープニングを飾る笙の音色に酷似している事に驚いた。これはTim Heckerの生成するデジタル・シンセの音が偶然笙に似ていたというよりも笙が発する独特の倍音に楽器から音が鳴っているというより寧ろ笙…

Fucked Up / Dose Your Dreams

M1のハードコア・パンクとサックスの組み合わせからは、大嫌いだったKemuriなんかが頭を掠めるが、年を取ったからなのか死に体のパンク・ミュージックに対する愛着故なのか、嫌悪感は無く寧ろ思わず頬が緩んでしまう。M7の正統派ハードコアも好みだし、サッ…

Spiritualized / And Nothing Hurt

ウクレレにスライドギター、ピアノにブラスにストリングス等の多種多様な楽器を使った豪奢なアレンジメントには、確かに殆ど1人で創ったとは思えない程の壮大さがある一方で何処か孤独を感じさせる音楽でもある。M3のイントロで高らかに鳴るオルガンは特に「…

Julia Holter / Aviary

瓦解寸前のジャズ・アンサンブルの持続のようなカオティックなオープニングは、前作「Have You In My Wilderness」収録の「Vasquez」に於いて試行されていたアイデアの拡張にも思える。特にこれまでのJulia Holterのイメージからするとやや意外な程の声量を…