2021-01-01から1年間の記事一覧

Silk Sonic / An Evening With Silk Sonic

Meshell Ndegeocelloに言われるまでもなくBruno Marsに良いイメージ等持ってはいなかっただけに、このコラボレーションの話を耳にした時には些か嫌な感じがした。「Malibu」がグラミー賞を逃した際の悔しがりようからキャリア志向の強さが垣間見えただけに、…

Mastodon / Hushed And Grim

メタル・アレルギー持ちの自分が、それでもMastodonだけは(それ程熱心にではないが) 聴けたのは、単にプログレッシヴ・メタルの「プログレッシヴ」の部分に依るところ大きい。その意味で(多少自分に言い聞かせるような部分はあったにせよ)The Mars Volta…

Tirzah / Colourgrade

本作の特徴を一言で表すなら、異常な音響という事に尽きる。これ程音色ではなく音響自体に戦慄に近い興奮を覚えたのは、James Blake「Sparing The Horse」の倍音が増幅してゆくようなシンセ・サウンドを聴いた時以来かも知れない。但しTirzahの場合、その特…

Courtney Barnett / Things Take Time, Take Time

ダイナミックなバンド・サウンドは鳴り潜め、威勢良くギターが唸りを上げる瞬間も皆無。相変わらずギター・ロックの範疇にある音楽には違いないが、Warpaintのドラマーのサポートの下で、控えめに言ってもチープなリズム・ボックスやキーボードを多用して、…

Grouper / Shade

海辺で音質の劣悪な短波ラジオから流れるポップスを聴いているようなイントロにこそ未だLiz Harrisらしさがあるが、M2以降はLiz Phair「Exile In Guyville」をよりローファイにした感じにも、My Bloody Valentine「Loveless」のアコースティック・ヴァージョ…

James Blake / Friends That Break Your Heart

シンガーとラッパーが多く参加し、これまでで最も開かれた印象のある作品になった。前作から引き続きのMetro BoominやSZAといった顔触れからは、すっかりメインストリームの住人になってしまったものだと感慨深くもなる。一方でM2ではBjörkを思わせる金切り…

Brockhampton / Roadrunner: New Light, New Machine

Danny Brownを迎えたM1は、多様な声色とユニゾンが賑やかで楽しく、ポッセ・カットの魅力に溢れている。アブストラクトでバウンシーなトラックとDanny Brownのフリーキーなラップの相性も良い。バウンシーなビートは確実に魅力の一つで、M11やM16なんかには…

Common / A Beautiful Revolution, Pt. 2

M2では5/4拍子で細かく刻まれるハットがビートにつんのめったような性急さを加えていて、少しアフロビート風だと思いながら聴いていたら、続くM3ではSeun Kutiを招聘して真正のアフロビートが披露され、そこに載っかる少しオールドスクールな感じのタイトな…

The Bug / Fire

地を這うようなベースの重低音と扇情的なビープ音、散弾銃の如きビートと強迫的なスポークン・ワード、或いは獰猛なラガ/グライムMC、そしてそれらが渾然一体となって醸し出すディストピックなサウンドスケープ。The Bug名義では7年振りだというのに冒頭か…

Benny The Butcher & Harry Fraud / The Plugs I Met 2

ラップに歌うようなフロウは皆無で、今やすっかり主流になった凡百のポップ・ラッパーとは一線画す、硬派な声色とオフビート気味のフロウから正統派のヒップホッパーといった印象を受ける。近年のラッパーでその佇まいが最も近いのはFreddie Gibbsだろうか。…

Low / Hey What

昨今のLowの再浮上の理由が良く解っていなかったのだが、本作の冒頭で成程と腑に落ちるものがあった。ノイジーで且つシンフォニックでもあるそのカオティックなイントロダクションはBon Iver「22, A Million」「I,I」と同質のもので、嘗てのスローコアの面影…

Little Simz / Sometimes I Might Be Introvert

ファンタジー大作映画宛らの荘厳でシネマティックなオープニングの、些か人を喰ったような大仰さがLittle Simz&Infloのコンビらしい。まるでディズニー映画のようなインタールードからは、InfloがSault或いMichael Kiwanukaの焼き直しではなく、明らかにしっ…

Liars / The Apple Drop

M1はチープなNine Inch Nailsといった感じのゴシックなインダストリアル・ロック調で、マイナー・チェンジには違いないが、よくまぁこれだけ毎回違う手が出せるものだと関心はする。しかも同時期に登場したポスト・パンク・リヴァイヴァルのバンドが今や殆ど…

Prince / Welcome 2 America

M1はP-Funk直系の濃厚で粘着質なファンク。90’sのポップス路線に余り興味が持てなかったが故に、2000年代以降のPrinceをフォローしてこなかった事に今更後悔させられる。M2以降は寧ろソウル色が強く、M3はスムースなストリングスが心地良いフィリー・ソウル…

Lorde / Solar Power

近年、アメリカのメインストリームのポップ・ミュージックに於けるフォーク/カントリーの存在感が益々大きくなっているように感じられるが、それは2010年代にロックに代わってヒップホップ/コンテンポラリーR&Bがデファクト・スタンダードになった事へのあ…

Leon Bridges / Gold-Diggers Sound

Robert GlasperとTerrace Martinに加えてCarlos Niñoまでもが参加しており、要するにジャズとヒップホップの境界線上に位置するR&Bという点で、自ずとMoses Sumneyが想起される(耽美的なヴォーカルも何処か似ている)が、プログレッシヴなインディ・ロック…

Lil Nas X / Montero

カントリー・ラップという、方や白人保守層を、方や都市部の黒人若年層(に限定されるものでは最早勿論ないが)を象徴するジャンルを混淆した、ある種の矛盾を抱えたキーワードに、相当な警戒感と同時に何処か異種混合による突然変異に対する淡い期待感を持…

Sault / Nine

「Untitled (Rise)」「Untitled (Black Is)」の興奮冷めやらぬ内の矢継ぎ早のリリースは、両作と比較するとややビート・ミュージック的な色合いが濃く、M2は(昔の)Ninja Tune辺りからリリースされたとしても違和感が無さそうなアフロ・ブレイクスである、…

Bobby Gillespie And Jehnny Beth / Utopian Ashes

バラード主体という点や、M3のアーシーなブラスやM4のカントリー・ロック調が全盛期のThe Rolling Stonesを彷彿とさせるという点で、「Give Out But Don't Give Up」が比較対象に挙がるのも解らなくはないが、「Rocks」のようなギター・ドリヴンな曲は全く無…

H.E.R. / Back Of My Mind

転がるようなハットが一見有りがちなトラップ・ベースのコンテンポラリーR&Bのようにも思われるM1だが、良く良く聴けばドラム・ビートは変則的で、エコー&リヴァーブ塗れのハイピッチなヴォイス・ループとシンバルの残響がなかなかにサイケデリックな音像を…

Dave / We're All Alone In This Together

ピアノや管弦楽器中心の上音はメランコリック且つシアトリカルで、M1の物悲しさに至っては今にも母さんが夜鍋を始めそうな程だ。KanoやGhettsの系譜に連なるリリカル系グライムに分類出来そうではあるものの、Stormzyを迎えたUKガラージのビートを採用したM3…

Loraine James / Reflection

Prefuse 73を思い起こさせるM1にはトラップ時代のグリッチホップといった趣がある。M2もグリッチーな音色こそ無いが、複雑なビートが全盛期のAutechreやRichard Devineを彷彿させるエレクトロニカで猛烈に格好良い。ジャケットにも何処かChris Cunninghamっ…

Darkside / Spiral

「Cenizas」の観念がソング・ストラクチャという実体に乗り移ったかのようなサウンドで、これといったキラー・チューンがある訳ではないにせよ要するにとてもポップ。(あくまでも最近のNicolas Jaarの作品の中では、という話だが。)特にDave Harringtonに…

Vince Staples / Vince Staples

グライムやバブルガム・ベースの影響下にあった「Big Fish Theory」に較べると随分シンプルで地味な印象を受ける。上音は殆ど単一の音色で構成されており音数も少ないし、唯一女性ヴォーカルをフィーチャーしたM7を除いてゲストは皆無で、全編に渡りVince St…

Dean Blunt / Black Metal 2

タイトル通り2014年のソロ作の続編であるが、前作に辛うじてあったエレクトロニック・ミュージックの残滓は最早跡形も無くなり、ローファイ臭も希薄になって、まるでJohn Caleの作品のようなアート・ロックが展開されている。要するに随分ちゃんとしていて、…

Tyler, The Creator / Call Me If You Get Lost

取り敢えずTyler, The Creatorのヒップホップ回帰作だと断言してしまっても差し支えないだろう。自身のラップの存在感は前2作と比べ物にならず、特にM2でヘヴィなキック・ドラムに乗ったストレートアヘッドなフロウは滅茶苦茶に格好良い。上音のネタ感も前…

Teenage Fanclub / Endless Arcade

同じように何の変哲も無いのに、The Cribsは駄目でTeenage Fanclubにこんなに心が躍るのは何故なのだろう。確かにハーモニーの質は高いし、抑制の効いたヴォーカルも魅力的だが、端的に言えば品があるか無いかの差のような気がする。その品とは例えばThe Hig…

10 Best Albums Of 2020

1. Sault / Untitled (Rise) 2. Haim / Women In Music Pt. III 3. Yaeji / What We Drew 4. Yves Tumor / Heaven To A Tortured Mind 5. Caribou / Suddenly 5. Róisín Murphy / Róisín Machine 7. Beatrice Dillon / Workaround 8. Against All Logic / 2…

Sault / Untitled (Black Is)

ジャケットに表象されているように、「Untitled (Rise)」が祈りや祝祭のアルバムだとすれば、こちらは闘争や憂いのアルバムだと言ってみても然程外れてはいないだろう。(尤も「Untitled (Rise)」のジャケットを見て合掌だと思うのは仏教文化圏の人間ならで…

Kid Cudi / Man On the Moon III: The Chosen

今やエモラップの先駆者として扱われる事も多いKid Cudiだが、声のトーンのせいなのか、確かに滲み出す内省性や抒情性があり、凡百の単なるマンブル・ラッパーとは一線を画す貫禄がある。個々のトラックは没個性な感じもするものの、ポップネスでは突出して…