2020-01-01から1年間の記事一覧

Róisín Murphy / Róisín Machine

噴射音のようなハットに起因する煙たい音像が印象的なM1を始めとして、ディープ・ハウス調のピアノ/シンセ・リフが本作のフックになっているのは確かで、M5のハウスはHerbertとの繋がりを思い起こさせる。そのレトロなハウス/ディスコ・リヴァイバルは、Je…

Fleet Foxes / Shore

柔らかなギターと透き通った女声ヴォーカルが醸出するアンビエンスがLowを彷彿させるM1はやや意外で期待感を煽られるが、すぐさまシームレスに始まるM2では、男臭いとまでは言わないものの実直そうで、悪く言えば没個性な男声ヴォーカルが聴こえてきて、また…

Gorillaz / Song Machine / Season One

シンセポップ一辺倒で、このプロジェクトのアイデンティティとも言えるゲストも大幅に抑えた前作に較べて、再び豪華で多彩な面子を迎えて曲調にもスタイルにも幅のある作品になった。M4のSchoolboy Qのラップを聴くと、特にラッパーの不在とヒップホップの要…

Sufjan Stevens / The Ascension

先ず浮かんだのはSufjan StevensがBon Iver化したという印象だったが、新作がエレポップらしいと聞き及んだ時点で想像した範囲内ではある。思っていたよりアグレッシヴな電子ノイズ混じりのサウンドには確かに「22, A Million」や「I,I」に通じるものがある…

Autechre / Sign

純然たるアンビエント/ドローン作品とは呼べないまでも、リズム/ビートに力点が置かれていないのは確かで、M2やM4等のノンビートには確かにOPNに接近するような感覚がある。勿論、本人達に確かめたところで冷徹に、完膚無きまで否定されるのがオチであろう…

Childish Gambino / 3.15.20

真っ白なジャケット(フィジカルのリリースが無いのでこう呼ぶのが正しいのか判らないが)に各トラックの開始時間を配した素っ気無い曲タイトル(Global Communication「76:14」へのオマージュ?、なんていう事は先ず無いだろうが)、リヴァーブによる変調さ…

Paul Weller / On Sunset

Paul Wellerの新作を聴くのは「Stanley Road」以来25年振りの事で、その間どのようなキャリアの変遷があったかは全く知らないが、総じて「Wild Wood」の直線上にあるサウンドで、意外な程に当時のイメージとの乖離は少ない。とは言え年相応に従来のブルー・…

Jessy Lanza / All The Time

Janet Jacksonを彷彿とさせる声は、Kelelaのクールネスを薄めて甘美さを加えて少しチャーミングにした感じとでも言ったら良いだろうか。サウンド面でもエレクトロニクス主体で、リズムのフックが豊富なR&Bという面でKelelaと通じる部分が多いが、Kelelaのラ…

The Strokes / The New Abnormal

The Strokesのファンだった事は一度もないし、寧ろ随分長い間疎ましいとさえ思っていたが、漸くここ数年できちんと「Is This It」を評価出来るようになった。「Is This It」以降の作品は未聴だが、The Strokesのファンが長年に渡って失望を繰り返してきたと…

Jessie Ware / What's Your Pleasure?

アルバムの少なくとも前半5曲はキラー・チューン。M1、M5は豪奢なストリングスやコーラスがバレアリックな雰囲気を醸し出すオーケストラルなガラージ/ハウス。M2はBlondieみたいだし、パーカッシヴなM3はレトロを狙った感じのコーラスが少しTom Tom Clubを…

EOB / Earth

如何にもなジャケットから勝手にエレクトロニック・ミュージックを想像していただけに余りのRadiohead振りに拍子抜けした。(勿論「Radiohead的」なるものが多様化し過ぎた結果ではあるだろうけれども。)Thom Yorkeが歌えばそのままRadioheadになりそうな楽…

Disclosure / Energy

徹底して享楽的で機能的な2ステップ/ハウスは、随所に配されたラテン・テイストが軽薄さをやや控え目にしたBasement Jaxxのようでもあるし、Slowthaiをフィーチャーしてグライムに目配せしたようなM3等のトラックから懐かしいToddla Tを思い出したりもする…

Kelly Lee Owens / Inner Song

エレクトロ・ポップ調のM2が中盤で表情をがらりと変えて、M3まで続く臆面も無くアシッディなテクノは、始まったばかりの2020年代の行末を予感させるようなところはまるで無いがとても良い。コロナ禍の反動は勿論あるだろうと思うが、滅多に無い事に久々にク…

Freddie Gibbs & The Alchemist / Alfredo

M7のフロウはMadlibとの「Situations」そっくりで、流石にこれだけリリースが旺盛だとフロウのヴァリエーションが尽きた感が無くもないが、それでもやはりDrake以降、歌うようなメロディックなフロウが主流となった中にあって、Freddie Gibbsのリズムで聴か…

Mark Lanegan / Straight Songs Of Sorrow

ゴシックで呪術的なオルガンの響きに、全く関係無くキックは極小でスネアと言うよりもパルス音のような機能性が欠落したビートが重なり、これまた脈絡無くMark Laneganのブルージーな歌声が挿入されるM1。 後半で漸く登場するディストーション・ギターが辛う…

Arca / Kick I

M1は喩えるならばインダストリアル版Asa-Chang & 巡礼? M4はグライムと同時に、トライバルなチャントのようなヴォーカルがOOIOO「Armonico Hewa」を連想させる。James Blake「Assume Form」にも参加していたネオ・フラメンコのスターRosaliaを迎えたM8は、…

Beatrice Dillon / Workaround

非西欧のパーカッションを採り入れたエレクトロニック・ミュージックは数多あれど、Aphex Twin「Digeridoo」にしろ、Shackletonの諸作にしろ、呪術的といった表現に表象されるエキゾティシズムを纏ってしまうのが普通だが、Beatrice Dillonの作るビートはタ…

Haim / Women In Music Pt. III

姉妹バンドによるポップ・ロックにそのバンド名、更には言っちゃ悪いが田舎臭いルックスから、思わずHansonなんかを連想してしまう。確かに毒気は一切無いし、M2等の何の変哲も無いパワー・ポップは蛇足だとしか思えないものの、シンバルを殆ど用いないドラ…

Charli XCX / How I'm Feeling Now

コンプレッサーでひしゃげたノイジーで耳障りなビートにアグレッシヴなラップが乗ったM1は、宛らインダストリアル・グライムの趣きで、或いは自身をM.I.A.の後継者に位置付けんとする宣言のようだ。M2ではチージーなポップス調に、全く無関係なハーシュ・ノ…

Moses Boyd / Dark Matter

M1はグライム/ダブステップ以降のUKベースのビートとジャズの融合と聞いて想像する通りのサウンドで、少し気恥ずかしさを覚えなくもない。ビートは何処までが人力で何処からが打ち込みなのか判別が付かず、流石は気鋭のドラマーと思うものの、M8の些かスト…

Perfume Genius / Set My Heart On Fire Immediately

M1はピアノのアルペジオ、ストリングス、コード進行等のどれを取っても「Everybody Hurts」そっくりで、ピアノが高揚感を煽るM12もR.E.M.っぽく、Mike MillsがPerfume Geniusを好きだというのも頷けるが、逆にMichael Stipeのヴォーカルの不在がぽっかりと空…

Moses Sumney / Grae

シンセ・ベースやホーンにユニークな電子音/エフェクトの類が絡みエクレティシズムを醸し出すM2はDirty Projectorsそっくりで、そのファルセットが余りにDavid Longstrethに似ていて少し吃驚した。ここでのDaniel Lopatinの存在感は「Dirty Projectors」に…

Soccer Mommy / Color Theory

先ず思い出したのはLiz Phairがメジャーなプロダクションに舵を切った1998年の「White Chocolate Space Egg」だった。ただ同作が確かにウェルメイドではあったが、90’sのUSオルタナティヴ・ロックがより広範なポップのイディオムを取り込み拡散してゆく最中…

Run The Jewels / RTJ4

とうとうRun The Jewelsのアルバムも4作目を数え、枚数の上ではCompany FlowもEl-Pのソロも超えた事になる。二人共最早ソロ作品を作る気配すら見せず、コンスタントにリリースを重ねる様子から察するに、El-PにとってもKiller Mikeにとってもパーマネントな…

10 Best Albums Of 2019

1. Floating Points / Crush2. Little Simz / Grey Area3. Flying Lotus / Flamagra4. Weyes Blood / Titanic Rising5. Tyler, The Creator / Igor6. Danny Brown / Uknowhatimsayin¿7. (Sandy) Alex G / House Of Sugar8. Burial / Tunes 2011-20199. Fredd…

Anderson .Paak / Ventura

Dr. Dreの関与のせいかエレクトロ/ファンク色が強かった「Oxnard」から一転して、生演奏主体のメロウなソウル路線への揺り戻しを感じさせる。M2等は「Malibu」後半のスウィート・ソウルを思い起こさせるが、よりスムースでストリングスの多用がフィリー・ソ…

Yaeji / What We Drew

有機的に伸縮するシンセとオールドスクール・エレクトロのような抜けの良いドラムマシンのビートの組み合わせは、何処か懐かしいSuzukiskiを思い出させる。グリッチホップ的なM5、坂本龍一「Riot In Lagos」みたいなM8、ブレイクコア一歩手前のジャングルM9…

Thundercat / It Is What It Is

Kamasi Washingtonのテナー・サックスが存在感を放つ、Thundercatにしては珍しくスピリチュアル・ジャズを感じさせるM2、Miguel Atwood-Fergusonによるものと思しき勇壮なストリングスとLouis Coleのエレピを引き連れて超絶技巧のドラミング(ブレイクのキッ…

The Weeknd / After Hours

シングルとして全世界でヒットしたM9はまるでA-Ha「Take On Me」のようで、実にいなたいけれども闇雲な突破力がある。メロディはキャッチーを通り越してチージーで、もはやオルタナR&Bどこ吹く風の正真正銘のポップスだがその強度は否定し難い。M10はScritti…

Dan Deacon / Mystic Familiar

冒頭のLCD Soundsystem「All My Friends」を想起させる素朴な音色のピアノ連打こそ予想外だったが、続いて高速アルペジエイターと大仰なオーケストレーションが入ってくると、やはり一気にAnimal Collective「Feels」「Merriweather Post Pavilion」に通じる…