Taicoclub Camps '10




µ-Ziq

のっけからの「Brace Yourself Jason」には流石に興奮した。
その後も「Lunatic Harness」辺り中心のセットリストで
古いファンには嬉しい限りだったが
淡々とそれらのトラックを繋ぐだけの内容で新鮮味は全く無かったと言って良い。
それでも大音量で体感するµ-Ziqのトラックの踊り辛さたるや
過去に観たAphex TwinSquarepusherを遥かに凌ぐ印象を受けた。
そこでのノイズは何らの機能性も持たず何に寄与する事も無い
ただ悪戯心や好奇心のみに裏付けされた純粋な「雑音」として聴こえ
それは現在の音楽に最も欠けた要素の一つだろうと思った。



Rei Harakami

直前にAlex PatersonのDJやµ-Ziqのライヴを観たせいだろうが
広義のテクノ・ミュージックにおける
Rei Harakamiサウンドの特異性といった事ばかりに意識が向いた。
その展開はミニマルなどでは全くないし
一時期のコーンウォール一派のようなポップス的な起承転結とも違う。
そんな筈は無いがそこからは作為性というものが殆ど感じられず
音が自律しているようなイメージさえ喚起させる。
Rei HarakamiのキャリアがKen Ishiiのリミックスから始まった事を考えれば
そのサウンドがテクノに端を発するものであるのは間違い無いのだが
正にカテゴライズ不能なそのサウンドは独自の進化を遂げた別の生態系のようで
何とも孤独でまた難儀な音楽だと改めて思った。



Why?

Why?の近作におけるオーセンティックなロック/ポップス路線は
単純に曲が良いという理由で好意的に受け止めてはいるが
フリークネスの塊のようだったあのAnticonの一員の動向としては
一抹の寂しさも感じていただけに
ベースボール・キャップにバスローブという出で立ちで登場した
その中東系の小男が醸し出す異様さには思わず嬉しくなってしまった。
気色の悪い振付も然る事ながらその特異な声の存在感は印象的で
それは近作の良い歌にも充分無理無く乗っかっていたが
やはり歌うような独特のフローを持った
奇妙なラップをもっと聴きたかったというのはある。
とにかく今変なラッパーが少なすぎるのだ。



Fennesz

夜明け前の白んだ空に眠気が最高潮の頭で聴くFenneszサウンドというのは
それはまぁ最高のトリップ・ミュージックに違い無く
つまり具体的な事は殆ど覚えていないのだが
目の前でFenneszがギターを鳴らしているのにも関わらず
そのサウンドにはまるで現実感が無く
ノイジーな音楽であるのは間違い無いのに
発せられた途端に拡散して朝の冷たい空気に溶け込んでいくような感覚があり
そこに思わず「環境音楽」という表現を見出した
というのは流石に短絡的過ぎるだろうが…。