Ninja Tune XX Tokyo 夜更けの巻




DJ Food & DK

自分が初めて購入したNinja TuneのレコードはDJ Foodのアルバムだったし
DKと組んだSolid Steelシリーズは最も好きなミックスCDの一つでもある。
その存在を知った時には既にColdcutの変名ではなくStrictly KevとPCのコンビだったが
自分にとってはColdcut以上にこのレーベルカラーを象徴する存在だ。
リズムやジャンルとは無関係に音楽をある共通するセンスで繋いでいくDJスタイルは
正にNinja Tuneの思想を体現している。
この日フロアに入ると彼等がColdcutの「Timber」をミックスしている最中で
その後も矢継早にミックスされてゆくNinja Tuneのクラシックの後ろでは
レーベルの20年を彩ったアーティスト達の名前が映し出され
(そこには既にレーベルを離れたDJ Vadimなどの名前もあった)
その光景には流石に感慨深いものがあった。



Coldcut

この日のColdcutはJonathan MoreとMatt Blackが
別々に一人ずつフロアを変えてステージを繋いでDJを行うスタイルで
完全に黒子に徹し切っていた。
自分が観たのはそれぞれ30分ずつであったが
Matt Blackの方はウォブリーなダンスホールダブステップ
一方のJonathan Moreは
テクノ〜ドラムンベース/ブレイクコア中心のプレイだったと記憶している。
Flying LotusHudson Mohawkeと契約したWarpと較べて
ここ1〜2年のNinja Tuneのリリースには何処か地味な印象もあったが
20周年を記念したコンピレーションに参加したZombyや
今回来日したToddla TやEskmoなども面々からは
ここ最近のポスト・ダブステップの流れの中で
再びNinja Tuneの存在感が増しそうな機運もある。
ひょっとしたらColdcutは既にレーベルのARに関わっていないのではと思っていたが
この日の二人のプレイを観る限りそれは無いなと確信した。
Eric B & Rakimのリミックスが20年以上前の出来事である事を考えると
(見た目は最早初老であるし)
そのリスナーとしての感度の錆びなさは驚異的ですらある。



Roots Manuva With Toddla T

まずはToddla Tのソロが非常に良かった。
音数は少な目でシンプルだが強靭なデジタル・ダンスホール
Ghislain Poirierなどに通じるが
冗長な部分はまるで感じさせない落ち着きの無いユーモアに富んだビートが気に入った。
とは言え20分以上が過ぎても目当てのRoots Manuvaが現れず
流石に煙た過ぎて入国拒否されたのではと不安が過ったが
漸く登場したそのトレンチコートの下に
ジップアップのパーカーという出で立ちにまずはやられた。
それは映画「Rockers」に出てくるジャージにネクタイ姿のラスタマンを想像させ
このUKジャマイカンに流れる血の濃さを思い入った。
Roots ManuvaがBig Dadaを定義したとはJonathan Moreの弁だが
彼が定義したのはレーベルのカラーのみに留まらない。
グライム以前の英国においてアメリカの物真似でない
オルタナティヴなヒップホップ観を提示し得たのは
Roots Manuvaを置いて他には居ない。
ラップのスキルがどうとかパフォーマンスがどうとか言う話ではないし
体力的に難有りと思わせる場面もあったが
Toddla Tの繰り出すシンプルでフリーキーなトラックの上で展開される
ダンスホールマナーのMCはちょっと他に類するものが無い体験で
改めてその存在の大きさに感服した。