Juzu / Re:Momentos Movements

改めてMoochyの作るトラックを聴いていると、その特徴である要素、例えば地を這うようなベースラインだったりダブ処理の多用だったりの多くは、ダブステップと共通する点でもあり、トラックによっては日本産ダブステップの一角と捉えられても無理は無い気がする。

両者のルーツに共にUKダブ〜ジャングル/ドラムンベースがあるのは確かで、言わば異母兄弟くらいの親近性はあっても不思議ではないが、ダブステップの母親を例えばUKガラージだとするならば、Juzuのサウンドの母親はサイケデリック・トランスだとするのは流石に妄想が過ぎるだろうか。

今では無かった事のように振返られもしないが、90年代後半の日本のアンダーグラウンドのポップシーンにおいては確かにBoredoms周辺を中心とするサイケデリック・トランスからの影響があった。
各種パーカッションやシタール、三味線等々の非西洋圏の音色が醸し出すエキゾチシズム(と5曲目で聴ける粘着質なエレクトリック・ギター)からは、確かにそんな時代があった事を思い出す。

一方で4曲目などはまるで808 Stateの「Pacific State」のようにバレアリックでもあり、ダブステップとの共通性にも関らず本作が些かも時流に乗った感じがしないのは、その強固な逃避感覚が余りに非現在的だからではないか。

昨今のアメリカのインディロックの盛況の中で、エスケーピズムは確かに顕著なムードだが、現在のダンス/クラブ・カルチャーには不自然な程伝播していない。
ジャンルやスタイルを超えて共有される「時代の空気」みたいなものは最早幻想という事か。