Buffalo Daughter / The Weapons Of Math Destruction

冒頭のTB-303のアシッドな響きがBuffalo Daughterの軽やかな原点回帰を告げている。
その原点とはシュガー吉永の「『Acid Trax』に影響を受けたロック・バンド」という言葉に集約されているだろう。
けれども如何にTB-303ヴォコーダーが多用されていようとも本作の重点は先の表現における「Acid Trax」の方ではなくて「ロック・バンド」の方を向いている。

些か乱暴ではあるが、ロック・ミュージックとはギターとドラムを基調とする音楽で、その二つの音色のみで成立する音楽だと言い換えても良い。
本作で展開されるのは正にそのような音楽で、ギターとドラムのラフでフィジカルな質感は「New Rock」よりも「Captain Vapour Athletes」に近い感触がある。

15年近く前の作品だというのに「Captain Vapour Athletes」からは今聴いても全く古臭い印象を受けないが、即ちそれは本作が特段斬新な音楽には聴こえない事の裏返しでもある。

しかし肉感的なミニマリズムはTo Rococo Rotの近作辺りとの共振を確かに感じさせるし、Mego周辺で何度目かのクラウトロック・リヴァイヴァルが囁かれる中でBuffalo Daughterというバンドを再発見するような感覚もあり、何とも頼もしい限りである。