Killer Mike / Michael

M1からしてトラップとOutkastの出会いという感じで、André 3000やCeeLo GreenからYoung ThugやFuture、JIDまで、地元アトランタの同胞と後輩を総動員してAタウンのサウンドを総括・統合するような内容に仕上がっている。
出身ではないものの、かの地に大いに借りがある筈のJanelle Monáeが不在なのが少し寂しい位に感じられるが、その不在をFousheéとEryn Allen Kaneが見事に埋めている。

ビートは決してトラップ一辺倒という訳ではないものの、シンボリックなオルガンや力強いゴスペルのコーラスにブラス・バンドといった、宛ら映画「アイドルワイルド」の世界を地で行くような音色とトラップを混ぜた例が他にあまり思い付かないだけに鮮烈な印象を残す。
アーシーなムードとトラップのビートを混交させた例としては、Janelle Monáe「The Age Of Pleasure」やThe Carters「Everything Is Love」に通じる感覚があるかも知れない。

ファンクにゴスペルにジャズにサイケデリック・ソウル等の要素と、今にも土埃の臭いが漂ってきそうなアーシーなメロウネスは如何にもダーティ・サウスという感じで、ラップ・アルバムの体裁を保ってはいるが、その黒光りするような艶やかで濃厚なブラックネスはやはりアトランタ出身のLil Yachty「Let’s Start Here.」と並べてみたくなる。

音色的な統一感がある上に1時間越えという長さもあって、中弛みする感じが無くもないが、多彩なゲストのラップを聴き比べるのも単純に楽しい。
中でも昨年のソロ・アルバムでは一切ラップが無かっただけに、ダーティ・サウスのアイコンとも言えるAndré 3000のラップが聴けるのは嬉しい限りだし、James Blakeがプロダクションに関わった作中随一のエレクトロニックなトラックも良い。

また本作のゲスト・ラッパーの面子の中では最も浮いていると言えるEl-Pは、プロデューサーとして珍しくオーソドックスなソウル・サンプル使いでアルバムのコンセプトに歩調を合わせている。
(サザン・ヒップホップには不釣り合いなスクラッチの多用はせめてもの抵抗か?)
ラップではアドリブ的に発される「Run The Jewels」のフレーズが、二人の結束の強さを感じさせ何とも微笑ましい。