Idles / Tangk

ブレクジット以降のUKのポスト・パンク、所謂クランク・ウェイヴと呼ばれるバンドの中では、例えばBlack Country, New RoadやSquidに較べると、中にはピアノ主体のバラードもあったりはするものの、相対的にギターとベースの存在感が強く、歌自体もメロディックで、言葉を選ばずに言えばかなり普通のロックに聴こえる。

同時に何処か面妖なフリークネスと仄かにロマンティシズムを漂わせている点で、初期のLiarsに非常に近いものを感じるし、心無しかヴォーカルの声も似ているような気もする。
(因みにロマンティシズムという事で言えば、M5はSmashing Pumpkinsの「Adore」や「Mellon Collie And Infinite Sadness」のDisk2後半を彷彿とさせたりもする。)

Black Country, New RoadやSquidに感じられるポスト・ロック、或いはBlack Midiの場合のマス・ロック臭は希薄で、M6ではバッキング・ヴォーカルでJames Murphyが参加しているようだし、日本版ボーナス・トラックとして収録されたM7のインダストリアル・テクノ風のリミックスにしてもCabaret VoltaireというよりFactory Floorみたいで、総じて2000年代のUSポスト・パンク・リヴァイヴァルとの近親性を感じる。

要するに新鮮味には乏しいが、アルバム後半のM8(「Hall & Oates」なんていうタイトルを付ける当たりに諧謔性を窺わせる)〜M10で怒涛のように続くリニアなポスト・パンク・チューンにはパンク魂が擽られる。
特にブーストの効いたベースが牽引するドライヴ感には堪らないものがあり、決して嫌いになれない類の音楽ではある。