Janelle Monáe / The Age Of Pleasure

冒頭のトラップのビートとシンギング・ラップ風は確かに前作「Dirty Computer」にもあった作風ではあり驚きこそ無いけれど、あれから5年が経過している事を踏まえると流石にアウト・オブ・デートな感は否めず、折角のEgypt 80の参加も台無しに感じられたが、まさかこれが本当のアフロ・トラップだという一種の表明だろうか?

というのは流石に冗談だとしても、確かにM4等はレゲトンと言うよりもアフロ・スウィングと呼んだ方が良さそうで、本作がアフリカの方角を向いているのは先ず間違いなさそうだ。
中盤のM6やM7、M13ではルーツ・レゲエ/ラヴァーズ・ロックが配置されている事を鑑みると、現代のアフリカそのものと言うよりも寧ろパン・アフリカニズム=世界中に散らばったアフリカに向けられた作品だと考えるのが適切だろう。

敢えて単純化すれば、アフロ・ビーツ/アフロ・スウィングという最新のアフリカン・ディアスポラの音楽的成果を採り入れたアルバムだと取り敢えずは言えると思うが、そこは流石にJanelle Monáe、土着的なスケールに統一感があり、DJミックスのようにシームレスに繋がる展開によって全体が一つの物語として成立するような凝集性にプロデューサーとしての手腕が発揮されており、単にトレンドに目配せしただけの散漫な作品にはなっていない。

しかし正にそのシームレスな展開、特にM3から繋がるM4のイントロ等がBeyoncé「Renaissance」と重なるが故に、Janelle Monáeが本来持つ強烈なオリジナリティは少し薄れた感じがするのも確か。
直接的に影響を受けたとは考え辛いが、常に同時代のコンテンポラリーR&Bのトレンドとは一切無関係に独自の道を進むかに見えたJanelle Monáeにも転機が訪れたという事なのかも知れない。