Kill Your T.V. '10 「Zankyo Tracks Of Shoegazing」 Release Party


Luminous Orange

竹内里恵は終始ステージ左奥でまるで存在感を消したがっているようにひっそりと佇んでいた。
そう言えばシューゲイザーに共通する極端にか細いヴォーカルは、自我の消失への欲求の表れであるようにも思われ、何か象徴的なものを感じたりもした。

人目を嫌うフロントマンに代わって寄せ集めのメンバーの中で、一際異彩を放っていたのはマヒルノのベーシストで、ヴィジュアルのみならずそのグルーヴィーなベースはLuminous Orangeの名曲達に新たな魅力を付け加えているように感じた。
更に強烈な印象を残したのは、曲によって出て来たり出て来なかったりするコーラスの女性で、Luminous Orangeが心底好きで堪らないといった表情で、バンドを見詰めながらピョンピョンと跳ねる様が異様で面白かった。

この日はシューゲイザーをテーマにしたイベントだったが、最初に出て来たバンドの音は殆ど歪んですらいなかったし、フルカワミキの場合は単なるディストーション以上の何物でもなかった。
Lumious Orangeは勿論その2アクトよりもよっぽど楽しめたけれど、昨今何かと取り沙汰される「シューゲイザー」というタームに関して、何かしら新しい視座を与えてくれる程の瞬間は無かった。

ただラストの(記憶が曖昧だが確か)「Drop You Vivid Colours」では、その日初めて倍音の向こう側に微かなアンビエンスを聴く感覚があり、それは結構サイケデリックな体験で、改めて松村正人の言葉を思い出した。