M.I.A. / Maya

リードトラックである「XXXO」のPVを観た際には些か唖然とした。
自分にとってM.I.A.の魅力とはDiploやSwitchによるプロダクションも然ることながら、先ず1stアルバム冒頭の「Banana」のようにレイジーで拍子抜けするような、歌ともラップとも付かないヴォーカルにあったが、そのM.I.A.がアイドルばりに声高らかに歌い上げるバブルガム・ポップ調には、否応無く「セルアウト」という言葉が想起され、来るアルバムに不安感を覚えもした。
(その「XXXO」に関しては磯部涼が「Lady Gagaに吐いた唾を飲み込んだ」ようと評していたが、何とも言い得て妙な表現だと思う。)

ところが聴き易いポップ・サウンドを予期した身としては、若干混乱するくらいこの作品は攻撃的で騒々しい音で溢れていて、先述した「XXXO」がむしろ救いに思える程だ。
高音域も耳触りなくらいに過剰だが、特にキックの音圧は凄まじく、上モノや時にM.I.A.の声までもを覆い隠している。
それは丁度多数のシークバーによってM.I.A.の「顔」が包み隠されるアルバムジャケットとリンクするようだ。

極端なプロダクションは好みではあるが、このアルバムではそれが何らかのヴィジョンを表象するようには感じられず、何処か投げ槍で粗雑な印象を受ける。
既に様々なところで言われている事ではあるが、何よりアルバムのトータリティを阻害しているのは、Diploの手掛けた安っぽいラヴァーズ・ロック風のトラックで、00年代を代表する才能による駄曲にはどうしたって一時代の終焉を感じずにはいられない。