Matthewdavid / In My World

チル&Bなんて言葉が生温く感じられるほどのこの酔いどれ振り。
埃を被ったソウルやR&Bのサンプルに、ヒップホップ由来の太いキックドラム、Matthewdavid本人による流暢なラップや巧みなヴォーカル、それらの音楽的な要素が過剰なエコーやリヴァーブによって、どろっどろに融解され伸縮やスクリューを繰り返された挙句、現出したサイケデリック極まりない音像はウィードで混濁し切った意識を音楽化したとしか。

Animal Collectiveがヒップホップをやったような瞬間もあれば、弛緩し切ったBoards Of Canadaのような瞬間もあり、更には唐突に飛び出すジャングルのリズム等、フックは多彩だが、何処から何処までが1トラックかが判然とせず、ミックステープを聴いているような構成も手伝って、全体的な印象は支離滅裂極まりない。
アンビエントの要素は言わずもがなだが、躁的なまでに一定しないビートは全く以てチルアウトを許さず、上モノとビートの調和は調子外れなベースラインによって終始阻害されている。

この違和感、もっと言うなら局所的には極めて音楽的であるにも関わらず、引いて見ると一貫性を持たないノイズと化すような感覚はやはりSun Arawに通じるものがあり、そればかりか根幹を成す要素が一定しない、言うならば中心の欠落は、DaedelusからFlying Lotusの近作に至るまでの近年のL.A.から発されるサウンドに共通する感覚であるように思われる。

Low End TheoryやNot Not Fun周辺から次々にアンダーグラウンドのスターを輩出し続ける彼の地への興味は尽きず、その中心にあってBrainfeederからStones ThrowJulia HolterやAlex Grayまでを連結するこの男の動向から、未だ未だ目が離せない。