Arca / Xen

不定形な展開に、ファットで隙間の多いビートや色彩豊かなシンセ等にはHudson MohawkeやRustieに近い感触があるが、彼等のサウンドとは異なりスラップスティックさは希薄で、憂いを帯びた金属音、或いは泣き咽ぶ怪獣の鳴き声のような電子ノイズには、隅々に至るまでメランコリーが染み付いている。

シンフォニックな音色やメランコリックな旋律は「I Care Because You Do」「Richard D. James Album」の頃のAphex Twinや、「Lunatic Harness」「Royal Astronomy」のµ-Ziqのアップデートようでもあるし、交響楽的な音色とインダストリアルなビートの鮮やかな対比という点で(更には異形をモチーフにしたアートワークに於いても)、Björk「Homogenic」(というか「Jòga」)を想起させるという意味で、両者のコラボレーションには必然を感じさせ、ノンビートのトラックにおいてはOneohtrix Point Neverがフラッシュバックする瞬間もある。

M6のヴォーカルチョップはグリッチホップのようでもあり、M11のグリッチノイズ塗れのビートやM14に於けるハーシュノイズの放埓からはエレクトロニカからの影響が確かに垣間見える。

1音1音のユニークさや重厚なプロダクションからスキルの確かさは明白で、ポップセンスも充分だが、IDMエレクトロニカを通過した新世代のビート・ミュージックという観点からすると、Hudson MohawkeやRustieの場合よりもアートワークを含めて余程解り易く、突然変異というような表現には違和感も無くはない。
Kanye Westに見初められ、FKA Twigsを世に送り出し、Muteと契約というキャリアの生い立ちではなく、例えば単なるWarpが発掘した一新人であったならば、或いは埋もれてしまっていた才能であったかも知れないとも思ったり。