Joker / The Mainframe

振り返ってみるとダブステップは、ハウス、テクノは言わずもがな、ジャズにアフロ・キューバンにIDM、そしてR&Bと、実に多くのジャンル/スタイルと接合した。
Gファンクをダブステップに持ち込み、James Blake等のR&B路線のポスト・ダブステップに先鞭を付けた(そして間接的には現在のオルタナティヴなR&Bの隆盛を用意したとも言える)Jokerの現在を伝えるサウンドは、多くの同胞達がダブステップ的意匠から戦略的に離脱していく中でも全く変わらず、2009年のKing Of Bass Musicが未だ当時の時点に留まっている事を伝えている。

相変わらず煌びやかで大仰なシンセ、今となっては懐かしささえ感じさせるウォブル・ベースにファットなビート、些か暑苦しくねちっこいエレクトリック・ギターのブラコン趣味は、メロドラマティックなストリングスやピアノ、更にはティンパニ等のシンフォニックな音色によって一層シネマティックに色付けされている。

加えてトラック同士のシームレスな繋ぎやM7〜M9のトリロジーから何らかのストーリーテリングが目論まれている事は確かなように思われるが、大味で緩急にも乏しく、Kendrick Lamar「To Pimp A Butterfly」程に成功しているとは言い難い。
漲る野心は十二分に伝わってくるが、いかんせんどうにもセンスがヤンキー臭く…。

確かに大作りで細部を聴かせる創意工夫の跡も伺えないとは言え、蒸せ返る程のメロウネスには易々と無視出来ない濃密さがあり、集中して聴くには辛いところはあるものの、流しっぱなしにしておくには決して悪くない作品ではある。