Black Midi / Hellfire

ロック・ミュージックではBattles「Mirrored」以来の衝撃かも知れない。
Bad Brainsのハードコアのスピード感とノイジーさ、Tyondai Braxtonに通じるクラシック/現代音楽にMahavishnu Orchestraのようなフュージョンから、ラテン、カントリー、フォルクローレにビッグ・バンド・ジャズまでをごちゃ混ぜに詰め込んだ音楽性はエクレクティックを極めている。 

ジャズ・パンク的な意匠はKing Kruleにも通じるし、そう言えばヴォーカルを含め少しTom Waits的要素も感じさせる。
M9に至っては殆どFrank Sinatraのようで、その雑食性にポスト・パンクよりも寧ろついついジャンクという言葉を使いたくなる。
混沌としていながら同時に極めてポップなその有り様は、Boredomsの名盤「Chocolate Synthesizer」に比肩するのではないかと思える程だ。

Rough TradeのGeoff Travisが言う通りその音楽的語彙の豊富さは半端では無く、フリーキーであると同時に確かな知性と洗練も感じさせる。
またGeoff Travisはオリジナル・ポスト・パンクと20’sのUKポスト・パンクの違いとしてテクニックを挙げていたが、SquidやBlack Country, New Roadよりもその技巧が解り易く表出しているという点でプログレ的でもあり、確かにThe Pop Groupには絶対に創れなかったであろう音楽ではある。

スポークン・ワードのようなメロディを歌わないスタイルのヴォーカルのデリバリーに於いてはSquidやBlack Country, New Roadと確か共通する感覚があり、一括りにされるのも解るが、この音楽と較べると両者共遥かにノーマルなロックに感じられる
(勿論どちらも良いバンドだとは思うが)。