Kaytranada / Timeless

オープニングからして如何にもヒップホップDJが手掛けたハウスといった感じで、そのレイドバックした、且つ洒脱なセンスはDJ Kozeに近いものを感じる。
ディスコ調のM2はRóisín Murphy「Hit Parade」にも通じる。
但しハウスと言ってもソウル〜 ディスコのブラック・ミュージックの系譜に連なるディープ・ハウス寄りのそれで、テクノやIDMの要素は全く無い。

ヒップホップに出自を持つDJ/ビート・メイカーでありながら、狭義のヒップホップ=ラップ・ミュージックに従属しない独特の存在感という点ではDanger Mouseなんかに近いような気もするし、M9〜M11等のシャッフル・ビートからは音楽制作のきっかけになったと言うFlying Lotusの影響も確かに感じられる。

但し好んでカオスを選択するFlying Lotusとは異なり、音数は少なくシンプルで、ラフでプリミティヴな手付きは寧ろJ Dillaに近いようにも思われる。
M8やM13、M14で聴けるコズミックなシンセ等からは、J Dillaに加えてSa-Raなんかの影響も透けて見えるような気がする。

総じて突然変異というよりは、綿々と続く黒人ビート・メイカーの系譜との連続性を強く感じる作品である。
但しアフロ・フューチャリスティックな感じは希薄で、もっとポップで良くも悪くも俗っぽさがあり、ダンス・ポップの時代に巧くアジャストしている。 
PinkPantheressをフィーチャーしたD2-M2はその最たる例で、他にもRavyn LenaeやTinasheといったポップ・シンガーを招聘する一方で、Dawn RichardにAnderson .Paak、Childish GambinoにThundercatといった錚々たる且つ玄人受けしそうなゲストによって、やや憎たらしいくらいにバランスが取られており、現行のシーンにおけるその存在感を存分に顕示する作品だと言えるだろう。