Shygirl / Nymph

トラップの影響を受けたグライムという意味でのUKドリルとオルタナティヴR&B、更にはUKベース・ミュージックとハイパー・ポップの混合体のようなサウンドで、ArcaやKingdomの関与からもFKA TwigsやKelelaの系譜と考えて差し支えないように思えるが、ビートは更にヴァリエーションに富んでいる。

M1は在り来たりなオルタナR&Bかと思いきや中盤でトラップ調に遷移するが、そのハイハットシンコペーションが産み出すグルーヴィなビートは平坦なUS産よりもずっとダンス・ミュージックとしての機能性が高く、UKらしさが顕れている。
M3のビートにも同傾向が認められるが、共にプロデューサーにクレジットされているSega Bodegaの力量に依るものなのだろうか?

M2は最近のArcaらしいレゲトンで、Rosalíaと並んでポストFKA Twigs最右翼といった風格を感じさせる。
M5はリズム要素をパッチワーク的に組み合わせたビートが頗る恰好良いKingdomらしいトラックだが、ポップネスも充分でCharli XCXとタメを張れるのではないかと思える程。
他にもシンプルなイーヴン・キックのハウス調のM10、ミドル・テンポのジャングルM11、M12のUKガラージ等、フロア映えしそうなトラックが満載だ。

ラッパーとしての出自にも拘らずラップらしいラップは少なく、Mura Masaの起用等も含めてグライム/ヒップホップの枠組みに嵌まらないポップ・スターの趣があり、UKインディ版のMegan Thee Stallionと言ってみたい衝動に駆られる。
かと言ってナスティさを売りにするようなところは皆無で、徹底してボトムの薄い声は印象としてはやはりKelelaに近いが、もう少し低目でゴーストリーなムードを醸し出しており、その名の通り自己顕示欲は希薄で匿名性が強いという点でヒップホップやR&Bと言うよりもクラブ・ミュージック的ではあり、UKからのポップの新しいスタンダードの宣言のようにも感じられる。