Shabaka / Perceive Its Beauty, Acknowledge Its Grace

アフロ/ダンス・ミュージック色が強かったSons Of Kemetとは対照的にほぼノンビートのまたしてもジャズ・アンビエント的な作品で、揺蕩うようなShabaka Hutchingsのフルートや尺八のロング・トーンが主役を担っている。
曲と曲の切れ目もファジーで、只管内省的で瞑想的でスピリチュアルな時間が流れていく。

静謐なムードがFloating Points「Elaenia」に通じる一方で、M7ではLaraajiをゲストに迎える等ニュー・エイジ志向も窺わせ、同じくM7でフルートを吹くAndré 3000との同調も感じさせる。
多彩で豪華なゲストは本作のトピックの1つで、M3ではMoses Sumneyが歌と言うよりも声をまるで管楽器の一種のようにコントロールした見事なヴォイス・パフォーマンスを披露している。

同じ傾向はM8やM10にも当て嵌まり、卓越した管楽器奏者としてのShabaka Hutchingsにフォーカスした作品と言うよりは、様々なゲストとのコラボレーションを通じて新たな表現の方向性を模索するような作品であるように思える。
一方でゲストにドラマーを招かず殆どビートと呼べる要素を排していることからも、Sons Of Kemet/The Comet Is ComingをクローズしたShabaka Hutchingsがネクストを志向する様子が窺える。

ノンビートでジャズ・アンビエント的という以外には然したる新機軸は認められず、それもある意味では飽和状態にある事を踏まえると、Shabaka Hutchingsのキャリアのリスタートを飾る作品としては少し物足りなさは否めない。
何処か個々の楽曲も散発的で、全体で一つの作品というような凝集性には欠ける点を鑑みても、ある種の習作的な性格のアルバムであるように思えるだけに、本作を経ての次を期待したい。