ウォブリーな音像にモダンさはあるが、奇を衒うようなところは皆無で、ストイシズムやハードボイルドな美意識を感じさせるという面で、Flying Lotusが現代のJ DillaでHudson MohawkeがMadlibだとすれば、こちらは差し詰めDJ Krushといった印象で、つまるところ従来のインスト・ヒップホップからの乖離や逸脱は殆ど感じない。
音自体は終始エレクトロニックな質感だが、重たいビートは正にヒップホップのそれで、10年前にPrefuse 73やPush Button Objectsと共に現れていたとしても然して驚きは無いというか。
アトモスフェリックな音響に懸ける執念には鬼気迫るものがある一方で、メロディも捨て切れないといった感じが滲み出しているようで、結果優等生的であるが面白味には今一つ欠ける。
というか然して情報量が多い訳でもなし、こういうトラックにこそラップを乗せてみたらどうだろうと思ったりもするが、ヴォーカルものばかりが目立つ事からして余計な御世話という事なのだろう。
中々興味の点が線を結ばないというのもまた時代だろうか…。