Moor Mother / Jazz Codes

タイトル通り、サックスやフルート、エレクトリック・ピアノやハープ等のジャズの音色が基調となっている。
相変わらずアブストラクトなジャズ・アンビエント的トラックは最近だとDawn Richard And Spencer Zahnの「Pigments」にも通じるが、それよりも本作では先ずビートの多様性に耳を奪われる。

先ずM1からいきなりジュークのようなキックの3連符に瞠目させられる。
M16でもジュークとドラムンベース風のリムショットの裏打ちを組み合わせたようなビートと、ジャジー且つスペーシーなエレクトリック・ピアノFlying Lotusを彷彿とさせ、頗る格好良い。
M6の微細なビートは聴きようによってはグリッチ・ホップ風だと言っても良いかも知れない。

M11はヴォーカルこそエキセントリックだが、ビートは比較的オーソドックスで、M15等と合わせてブーン・バップ的と言いたくもなる。
ストレートな男声ラップをフィーチャーしたM3等はある種のジャジー・ヒップホップとして受容されても不思議ではないし、M20ではA Tribe Called Questを引用までしている。

M5等のねちっこいリズムはファンク的でもあるし、M9等のR&Bヴォーカルをフィーチャーした楽曲も増えて、ネオ・ソウルとも然程遠くはない
(M15なんかはまるでErykah Baduみたいでもある)。
2022年のMoor Mother関連作では圧倒的に700 Blissの方が評価が高かった印象があるが、個人的にはMoor Motherをブラック・ミュージックの系譜で聴けるこちらの方が断然好み。