Kojey Radical / Reason To Smile

ファットなドラム・ビートはUKヒップホップでありながらグライムやUKドリルとの関連性が希薄で、器楽演奏を多く取り込んだソウル/ファンクの要素とユニークなエレクトロニクスの混交にはChildish Gambinoに通じるものがある。
それはつまりヒップホップのゲームの趨勢から離れたところに居るような異端な存在感があるという事に他ならない。

元々Sons Of KemetやEzra Collective等のサウス・ロンドンのジャズ界隈で名前を聞く事が多かったが、本作はSwindleがプロデュース、ミックスにはJokerが携わっている。
根っこは同じUKクラブ・シーンでも、グライムの直線的な系譜からは枝分かれしたところから出てきた人だと考えるのが自然だろう。
それはSaultやLittle Simzにも言える事で、UKに於ける新しいオルタナティヴの潮流の表面化がここ数年で起きているという事なのかも知れない。

所謂グライム/ダブステップとは違うが、音圧の強いビートやファンクやジャズの要素、それらを組み合わせる洒脱なセンスは、言われてみれば確かにSwindleのものに違いなく、ダブステップのブームの終焉からおよそ10年を経て、このような形でその活躍を耳にする事が出来たのは単純に嬉しい。
加えてM2のメロウで煌びやかなブギー・ファンク風等には確かにJokerに通じる感覚もある。

華美なコーラスのせいで然程の存在感は無いが、低音の鈍重な響きの声で、しかし歯切れ良く繰り出されるラップは何処となくThe Notorious B.I.G.を思い起こさせそれなりに魅力的。
因みに意外と全然太ってはおらず、寧ろどちらかと言う2Pacみたいなスタイリッシュなハンサム・ガイでスター性も充分。
今後が楽しみなアーティストである。