DCPRG / Second Report From Iron Mountain USA

M1のライムを聴けば、名門Impulse!からのリリースとなったDCPRGの復活作(と呼ぶのが妥当なのかは判らないが)がアメリカに向けられたものであるのは明白だが、そこで新たに導入された武器が日本語ラップだというのが、如何にも菊地成孔らしい倒錯を感じさせる。

10分に及ぶマルチ・ポリリズムが齎すカオティックな演奏の応酬に、菊地成孔大谷能生(何とBlack Smokerからのリリースもあるという)の御馴染のコンビ=Jazz Dommunistersとヴォーカロイドによるフリーフォームなラップ(?)が乗るこの曲には、流石のアメリカの先鋭的なジャズ・リスナー達も困惑する(或いは拒否反応を示す)様が目に浮かぶが、続いての改めて(襟を正して?)DCPRGをレペゼンするようなダンス・チューンのM2でDCPRGが単なる色物でない事を理解するだろう。

しかし本作のハイライトはやはり間違い無くSimi Labを迎えた2曲で、特にM4は菊地成孔が「トラックがフローする」と語っていた通り、凡そヒップホップの安定したビートとは掛け離れた多面的なリズムのアクセントに、Simi Labの面々が巧みにラップで応戦する異形のジャズ・ヒップホップ(?)で、それこそMiles DavisからA Tribe Called Questに至るまで、ジャズの側からもヒップホップの側からも幾度と無く繰り返し試みられてきた交配に、未だこのような可能性が秘められていたという事に些か驚かされる。

それにしてもM1に於ける菊地成孔のラップの流暢さときたら…。
何故この人はこんなに器用に何でも熟してしまえるのだろうか、常人には凡そ想像も付かない。