Mouse On Mars / Parastrophics

Mouse On MarsとModeselektorのMonkeytownとは、如何にも喰い合わせが悪そうに思えたが、実際にアルバムを聴いてみると、成程と腑に落ちるものもあった。
強調されたボトムに、明快で多彩なリズムとウォブリーな電子音は、モダンなベース・ミュージックと言うよりもむしろLAのLow End TheoryやグラスゴーのLucky Me周辺の、新興のブレイクビーツ・ミュージックに通じるような感触があり、PlaidSquarepusherの近作のような時間が止まったような感覚は一切無い。

Flying LotusやRustieの間に聴いても違和感は無いと言うか、実際M8のつんのめったビートはFlying Lotusエレクトロニカの遭遇を聴いているようだし、M10の煌びやかなエレクトロはMouse On MarsによるRustieのリミックスだと言われれば信じてしまいそうな感じすらある。
但しトレンドに迎合したというよりも、それらを少しばかりおちょくっているような諧謔性は相変わらずで、デジタル・シンセサイズによって生成された音のみで構成されたそれらのサウンドのパロディといった趣さえある。

その音色自体は10年以上も前に他でもないMouse On Mars自身らによって発明されたものの使い回しではあるが、その複雑な音響はやはり未だにユニークで、新興のビートとの対比によってむしろその新鮮さは強まってさえ感じる。
(尤もRustieなんかは敢えてチープな音を使ってフリークネスを醸出しているようなところもあるが。)

本作を聴いていると、エレクトロニカの行き詰まりというのは、その音色やデジタル・シンセサイズという方法論自体に原因があった訳ではなく、ただ当時は誰もが後ほんの少しのポップネスやフレンドリーさを欲していただけだったのかも知れないと思ったりもする。