Tim Hecker Daniel Lopatin / Instrumental Tourist



最近、Tim Hecker
2001年のTigerbeat6のレーベル・コンピに参加していたJetoneであった事を知り
現在のノイズ/ドローンとエレクトロニカの連続性を改めて思い知る気がした。
Megoの再興はその最たる例で
特にOneohtrix Point Never=Daniel Lopatinに顕著なノイズとアンビエントの共存は
FenneszやOvalを思い出させるという点で
確かにある種のエレクトロニカ・リヴァイヴァルの様相を呈しているようにも思える。


但し勿論それは単なる回帰ともまた違っていて
如何にもなグリッチやハーシュ・ノイズやドローンと全く等価に
当時であれば絶対に混在する事が無かったであろう
プリセットみたいなシンセ音とそのシンフォニックなレイヤーや
パイプオルガンやストリングスや或いは人声を変形させ伸張させたような音が
本作では鳴っている。


Boards Of CanadaBoredoms、Farmers ManualにOvalにSuzukiskiにEmeralds
本作から連想させられる音楽のレンジは幅広く多彩で
それはこの音楽が音色の独自性を売物にしていない事の表れであるようにも思われる。
エレクトロニカの時代と大きく様相が異なる点の一つは
ある音が生成されるプロセスや方法論がここでは最早全く重要性を持たず
2010年代のエレクトロニカ(ともう思い切って言ってしまおう)に於いては
再び音が部品に立ち戻り
その集積としての音楽にフォーカスが当たっているという事で
それは要するに、音そのものを聴取するという行為に伴う快楽が
然程は持続しないものだという反省の結果であるのではないか。


恐らく本作で凶暴なハーシュ・ノイズや神経質なグリッチ・ノイズと共に聴こえる
荘厳で美しいメロディやハーモニーと
AutechreやOvalが2000年代の後半に
そこにリズムを加えた音楽の根源的な要素に回帰するように見えた事とは
決して無関係ではないだろう。