Rustie / Evenifudontbelieve

バース・ディレイの掛かったエレクトリック・ギターの音色で幕を開け、初期OPNやEmeraldsに通じるシンセ・アンビエントの終盤に、雨音や雷鳴、風がマイクを吹き付ける音等が挿入されるM1は、そのニューエイジ臭によってRustie新展開を予感させる。
しかし続くM2はトレード・マークの派手でレイヴィなシンセ・フレーズや、ブレイクに於けるビートの連打や上昇音が相変わらずで、それどころかエコー処理やサブベースは以前よりも更に過剰さを増している印象を受ける。

3分程度と短く、異常なまでワンパターンにシンフォニックなシンセによるコーラスとブレイクが繰り返されるトラックが、緩急も無しに矢継ぎ早に繰り出されたかと思えば、急に尻窄みにフェードアウトする様には、ミックステープ的ないい加減さがあり、デジタル配信オンリーのリリース故の手抜だろうかと訝しくもなる。

とは言えイントロやブレイクに於ける背景音のレイヤーは多層的で、相変わらず過剰に躁的ではあるがアンビエント的な意匠が目立つ。
音色のチープネスを売りにするようだった以前の作風は薄れ、賛美歌を斬り刻んだかのようなM6のスタッター効果やフィールド・レコーディングによる素材の多用等、新しい音響を獲得しようという熱意は十二分に伝わってくる。
オプティミスティックだったメロディも微か憂いを帯び、全編覆う環境音やホワイトノイズ、過剰な破裂音等でコーティングされたような目の粗く、ささくれ立った騒々しい音像も合わせて以前には無かった切迫感が漂っている。

M14では再びM1に対応するようにノンビートのトラックが配置され、その音響の深化やメロディの成熟と、セルフパロディのようなノイジーなビートの攻撃性や、パンキッシュでトラッシーなコンポジションとの対比を際立たせている。
まるで無軌道な少年性と成熟とが相反する方向に引き裂かれてバーストするようという点で、Rustieの過渡期をコンパイルした作品だと言えるかも知れない。