Charli XCX / How I'm Feeling Now

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コンプレッサーでひしゃげたノイジーで耳障りなビートにアグレッシヴなラップが乗ったM1は、宛らインダストリアル・グライムの趣きで、或いは自身をM.I.A.の後継者に位置付けんとする宣言のようだ。
M2ではチージーなポップス調に、全く無関係なハーシュ・ノイズが同居しているが、この両極端なコントラストそのものこそCharli XCXの本来の付加価値だろう。

前作で足を引っ張っていた冗長なバラードも無く、「1999」のような如何にもバブルガム・ベースなトラックも少ない。
ドラムンベース風のブレイクが聴けるM7等のダンス・トラックも抑制が効いており、「Charli」のチージーさを挽回するようで、比較的(Charli XCXを聴いている自分に対する)後ろめたさは薄れたというか。

M10やM11の過剰に派手でレイヴィなアルペジエイターやサイレン音は最早ベース・ミュージックと言うよりもEDMのクリシェようで、何処かメタEDMとも言えそうな諧謔性を感じさせるという点で、RustieやHudson Mohawkeを思わせなくもない。
EDMを受け入れたくないというバイアスがそう自分に感じさせるだけかも知れないが。

メディアでも以前のミックス・テープに近いといった感想が散見されるのは要するにそういう事なのだろう思うが、COVID-19によるロックダウン下の自宅で僅か39日で制作されたという成り立ちに於いても、ミックステープと呼ぶ方が自然な気がする。
レコード会社のエクゼクティヴが意思入れをする余地も無かったであろうという意味で、逆説的に「Charli」が相当薄められていたという証左のようにも思えてくる。