Samiyam / Animals Have Feelings

繋ぎ目を敢えて強調するような歪なループ感に、クォンタイズをまるで無視した手グセが残る隙間だらけのラフなビート、短いトラックがシームレスにミックスされたビート集的な佇まい等、どれを取ってもJ DillaMadlibを彷彿させるという点で 、Stones Throwからのリリースは至極しっくりときた。
一方でトラックを薄い膜のように包み込む目の粗いシンセ・シーケンスやサーフェス・ノイズが醸し出すコズミックでサイケデリックな感覚には初期のFlying Lotusに通じるものもあり、LAビートの新旧世代を繋ぐミッシング・リンクと呼べる存在であろう。

というような感想は「Sam Baker's Album」を聴いた際に抱いたものから全く変わっておらず、その間に起こった盟友Flying Lotusプログレッシヴ・ジャズ化やら、Black Lives Matter時代のソウル・ミュージックの復興やら、勿論トラップにも一切目をくれず、ビートメイカーとして我が道を行く姿は頼もしくもある。

とは言え唐突に挟み込まれるソウルや60'sポップ、80'sのエレクトロ・ファンクから日本の歌謡曲(「飛んでイスタンブール」!)に至るまでのレア・グルーヴ的なサンプリング・ソースの存在感が増した印象があり、ほぼ一定のBPMで紡がれるアルバム全体にあって、ネタの多様性が効果的な色彩を生んでいる。

歪さを残しつつも、短過ぎず長過ぎずの絶妙なスパンとタイミングで各トラックがイコライジング/ミックスされる様が非常に心地良く、優れたDJミックスを聴いているような感覚があり、洗練さえ感じさせるという点でアルバムとしての完成度は格段に向上した印象を受ける。
確かに突出した印象は無く、地味と言えば地味だが、2016年の隠れた良盤の一つと言っても過言ではないだろう。