MGMT / Little Dark Age

冒頭を飾るのはまさかのシンセ・ポップ。
「Kids」だってそうじゃないかと言われれば確かにそうだが、シンセの音色はまるでYMOのようにレトロで、ユーフォリアを失ったマイナー調の「Time To Pretend」のようなM2等では、サイケデリアが後退した代わりにシンセ・ベースが前面に出て、Neon Indian「Vega Intl. Night School」なんかに近い80’sディスコ調のニュアンスを醸出している。

M3は一転してMGMTらしいThe Birds風のサイケだが、中盤に唐突に差し込まれる紛れも無いAriel Pinkの不遜な笑い声によって瞬時に諧謔性が充満する。
地声で歌われるM6のヴォーカルも酷似していて、クレジット通りだとすれば関与はM1とM3のみというのが俄かには信じ難い程、強烈なAriel Pinkの影響下に制作された事を窺わせる。

今にも80’sのトレンディ・ドラマが始まりそうなM4のAORは一種のジョークなのだろうが、甘ったるい歌声が余りにすんなりとフィットしているせいでAriel Pinkが醸し出す程の異物感は無く、やや退屈な感じもある。
チルウェイヴとの共振と言うには明らかに時期を逸しているが、気付けば昨年のSt. Vincentと言い、2018年に入ってからもオールドスクール・エレクトロを思わせたTune-Yardsや、PrinceやChicの影響著しいJanelle Monáe等、いつまで経っても80’sが終わらない。

Tommy Guerreroみたいなラウンジ感が異色のインストのM7を挟み、チージーなヴォーカルと大仰なシンセがイタロディスコ風のM8でクライマックスを迎えた後は、正気を取り戻したかのようなサイケデリックでフォーキーなM9、M10でアルバムの幕は閉じる。
相変わらずトリッキーなコード進行に技巧派振りも存分に発揮されており、驚くような新鮮さは無いが、新しい試みとMGMTらしさのバランスが程良く、プロダクションを選ばないソングライティングの優秀性こそが彼等の一番のストロング・ポイントである事を改めて思い知らさせる。