Lil Uzi Vert / Eternal Atake

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冒頭のチージーなシンセ・リフ主体のバックトラックは退屈で、メロディを歌うラップのスタイルには流石にもううんざりとさせられるが、それでもしっかりとした抑揚がありこれだけファストなフロウというのはそれなりに凄味もあるし、FutureやYoung Thugの二番煎じのような気もするがラガ風の訛りも一応個性にはなっている。

M3以降のトラックはアブストラクトになり、M5の銃声のループは昔ながらのギャングスタ・ラップのそれというよりも、近未来風のSEと相俟って何処かSFっぽい。
(ジャケットのイメージと言い、宇宙を舞台にしたストーリーテリングでもあるのだろうか?)
ミドルスクール感のあるM6のシンプリシティにはDenzel Curry「Zuu」に通じるものもある。

中盤のM7、M8ではエレクトロニック路線が続き、テクノ・ポップ風のアルペジエイターやオートチューンのヴォーカル・チョップはバブルガム・ベースと共振するようで、Vince Staples「Big Fish Theory」を思い起こさせるが、その手のものにしてはラップのアクセントがアップビートに置かれているのが新鮮と言えば新鮮な気もする。

アルバム後半は叙情的なアンビエント調で占められており、メロウな歌唱は最早ヒップホップというよりオルタナR&Bに分類する方が適切な気がする程だ。
些かメロディ過多でやや鬱陶しいがキャッチーさは申し分無く、エモラップのタグを警戒して聴いた割には殊更抑鬱的な感じが無い分何と無く聴けてしまう。