Anderson .Paak / Oxnard

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ブラックスプロイテーション映画風のオープニングの、スムースでありながら滾る熱を内に秘めたようなクールなラップが早速気分を高揚させる。
(ジャケットと言いトラック間のスキットと言い、ブラックスプロイテーションを模した造りは本作のコンセプトの一つであるようだ。)

期待通り「Malibu」の不完全燃焼を払拭するように、類い稀なラップを堪能出来る内容になっているのはエグゼクティブ・プロデューサーを務めたDr. Dreの指示だろうか。
真偽はさて置きM4やM8等のDr. Dreらしいナスティで硬質なエレクトロ・ファンクに乗せたラップの快楽指数はやはり高い。

一方でSchoolboy Qに替わってBlack Hippyクルーから今度はKendrick LamarをフィーチャーしたM3は、まるで「Am I Wrong」のリメイクのようなブギー・ファンクで「Malibu」のファンへのサービスも抜かりない。
(コーラス部分の高揚感を煽るシンセベースはOm'Mas Keithの仕事だろうか?)
自分のような「Compton」派と「Malibu」派の両方にバランス良くアピールする内容で、Dr. Dreの流石のビジネス感覚が発揮されている。

「Malibu」では60’sのソウルが基盤の一つであったのに対して、本作の例えばM2やM5等のメロウでソフィスティケートされたファンクからは70’s臭が漂う。
M7の前半のようなスロウ・ナンバーは、Sam CookeよりもStevie Wonderと言う方がしっくり来る。
M14はカリブ海の香りがするダンスホール風で、オーセンティックなソウル路線も良いがAnderson.Paakの高い声にはこういった猥雑な感じも良く似合う。
確かに「Malibu」ほどの目立ったフックとなる曲は無いが、相変わらず佳曲は多く期待に違わぬ充実作ではある。