Nubya Garcia / Source

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どの曲も反復するベース・ラインが基盤となっており、特にM1のサブベース的なそれはダウンビートで打ち込まれるスネアと合わせて、ヒップホップが血肉化したコンテンポラリー・ジャズの印象を強く与える。
過去にはバンド・メンバーとしてフィーチャーされた等の交流があるらしいMakaya McCravenにも通じるが、現代ジャズにおけるヒップホップの影響はもはやスタンダードと言っても過言ではなく、それ自体に然して新鮮味がある訳ではない。

とは言えBPM100未満の16ビート一辺倒では決してなく、スムースでグルーヴィなビートがアシッド・ジャズ風のM2やレゲエ調のM3等、テンポもパターンもバリエーション豊かなリズムが確実に一つのフックになっている。
M6やM8はポリリズミックなドラムがアフロ・ジャズ的で、M7ではタイトル通りクンビアが採り入れられており、エスニックな意匠も特徴の一つと言えるだろう。

その在り方は確かにモダンではあるが、Moses Boydのような時折少し気恥ずかしくなる程に明白な折衷主義は少なくとも表面上は無い。
オーセンシティとモダニティのバランスにおいては、やはり同じテナー・サックス奏者にして、頻繁に比較の対象となるKamasi Washingtonに通じるものを感じる。

主役は勿論Nubya Garciaのサックスで、そのクールにもホットにも寄り過ぎない絶妙な温度感がとても魅力的だ。
熱量を帯びた演奏の最中でも陶酔仕切らないと言うか、何処か冷静さを保った感じがある。
そのサックスに負けず劣らず存在感を放っているのがJoe Armon-Jonesによる流麗且つ時にエキサイティングなピアノで、両者の抜群の相性がアルバム全体を下支えしている感がある。