King Krule / The Ooz

チリノイズに覆われたクリア・トーンのギターやローズ・ピアノ、テナー・サックス等のジャズの音色の他に、ブルーズにロックンロール等のルーツ・ミュージック志向が若干23歳とはとても思えない老成したセンスを感じさせる一方で、ブレイクビーツ風のビートやラップ(と言うよりはビートニクスのポエトリー・リーディングのようだが)には、単にヒップホップを咀嚼したとかいう生温い表現では済まされない新しい感性が漲っている。

リヴァービーでダビーな音像や珍妙な装飾音は宛らLee Perryようで、M15のファンクではFela Kutiの影さえちらつかせる。
Black Francisを彷彿とさせる鬼気迫るシャウトと言い、M10のフィードバック・ノイズと言い、Pixiesの影響も強ち冗談では無さそうで、そう思うと全編を覆う虚脱感とストレンジなムードが「Trompe De Monde」に通じるような気もしてくる。

多様なバックグラウンドを感じさせる割にエクレクティックではまるでなく、そのスタイルは完成されている。
場末のパブのラウンジ・ミュージックのようなムードがMount Kimble「Love What Survives」に通じるところもあり、解り易いジャズ・パンクという形容からは零れ落ちるその異物感には、ミクスチャーと言うよりもやはりフュージョンという言葉の方がしっくりと来る。

諧謔性ニヒリズムを感じさせる分、こちらの方余程好みだが、白人/黒人、US/UK、若者/老人といった様々な枠組みの急速な崩壊を実感させるという意味で、Moses Sumneyと並んで2017年を象徴する作品で、突然変異的という点ではBeck「Mellow Gold」に近い感覚があるかも知れない。
そう言えば「Loser」も奇妙な曲ではあったが全くエクレクティックではなかった。