Teenage Fanclub / Endless Arcade

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同じように何の変哲も無いのに、The Cribsは駄目でTeenage Fanclubにこんなに心が躍るのは何故なのだろう。
確かにハーモニーの質は高いし、抑制の効いたヴォーカルも魅力的だが、端的に言えば品があるか無いかの差のような気がする。
その品とは例えばThe High Llamasに通じるような類のもので、やはり土地が育てる気風みたいなものは軽視出来ないなと思う。

淡々と紡がれるグッド・メロディには、大袈裟な感傷や悲哀は無く只管慎ましい。
特筆すべきような点は何処にも見当たらないのに只々好ましいという意味で、The Velvet Undergroundで言えば3枚目に近い印象を受ける。
特にタイトルからしてノスタルジックなM9が個人的には白眉。

とは言えM2のメロディはかなりストレンジであると同時にテクニカルでもあり、ベテランらしい熟練も感じさせる。
M1後半の長尺のギター・ソロで聴かれるヒプノティックな要素やジェントルな歌声等は山本精一羅針盤に通じるものがあり、何処というのは明確に言えないが、単なるギター・ポップではない異物感がある。

但し野心を覗かせるような要素は何も聴こえて来ず、基本はただ良い曲を書き、丁寧に演奏して歌う事に徹している印象で、日常的な営みの中から産まれた音楽という感じがする。
パンデミックや異常気象といった、正にカタストロフ的な惨状の只中にあって、このような何気ない音楽を奏でる事自体が何か力強いメッセージのようでもあるし、逆にまた強烈なニヒリズムを感じさせたりもする。