Grizzly Bear / Painted Ruins

ギター・ロックにチェンバーな楽器音やエレクトロニクスを混淆させたプロダクションは、最近の作品で言えばThe National「Sleep Well Beast」に通じるが、The Nationalの生真面目で潔癖な感じと較べると、何処かストレンジで特定のエモーションへのフォーカスを忌避するようなソング・ライティングは余程好みではある。

M3、M4、M6等の楽曲で聴こえるテクニカルでタイトなドラミングと耽美的なコーラスの組み合わせはやはりRadioheadを連想させるが、何処かクラウトロック的という点では「OK Computer」よりも寧ろ「Kid A」/「Amnesiac」期に通じるような気もする。
直線的でモータリックなリズムにグラム・ロックアンビエントが混ざったようなM2はDeerhunterとも共振するようだし、時折耳を劈くファズ・ギターやオルガンやコーラスの金属的な音響にはFlaming Lips「Embryonic」に通じる感覚もあるが、それにしたってコンテンポラリーなインディ・ロックのスタイルの幅がごく限られてしまっている事を実感させる。

一方で音色面ではM1を始めアルバムを通底する倍音が複雑で揺蕩い震えるようなシンセが否応無くJames Blakeを想起させる。
エレクトロニック・ミュージックとR&Bの境界を融解させたという意味で、2010年代のポップ・ミュージックにとって確実に一つのエポックだったと言えようその存在への雑食性を旨とするインディ・ロックからのアプローチに受け取れるという意味では、「Dirty Projectors」とも通じる作品だと言えるかも知れない。

他にも優雅なストリングスやアトモスフェリックなコーラスからホワイト・ノイズまで、楽曲の根幹を担う要素よりも寧ろ背後で展開される多彩で豊潤な音響の方が
余程本作の肝要であるように思え、それ故にダイナミクスを重視した結果であろうが、ヴォーカルやベースのボリューム・レベルが必要以上に大きく、細部を聴き取り辛くしているのが実に勿体無く感じられる。