Arca自身がクラブ・ミュージックにフォーカスしたと語っているように、これまでで最もビート・メイキングの才能が爆発した作品だと言えるだろう。
勿論頻繁にテンポは変わるわ瓦解するわで、ここでの「クラブ・ミュージック」は決してフロア向けのダンス・ミュージックを指すものではなく、IDM〜エレクトロニカの系譜の最新形と呼べる類のものだ。
(何せここで組んでいるのはMax TundraとMachinedrumだ。)
即ちビートはスラップスティックだがしかし同時にポップネスも申し分無い。
まるきり「Drukqs」のようなM5のシンセの旋律を聴けば誰しも思うであろう短絡的な発想ではあるが、エクストリームな音をポップに昇華させる手腕に於いて、ここでのArcaはRichard D. Jamesの正統な後継者のように思える。
「Kick I」「Kick II」と較べると歌やチャントへの依存度は相対的に低目で、冒頭の数曲を除いてはレゲトンやクンビアといったエスニックなリズムも希薄。
M4はHudson Mohawkeは想起させるウォンキー風だし、M10はPush Button Objectsを彷彿とさせる、意外と今までのArcaには無かった正統派のグリッチ・ホップ風で、これまでに無くビートの多様性に富んでいる。
Arcaらしいメランコリックなメロディをポップに昇華したM11なんかを聴くと、漸くFKA TwigsやKelela「Take Me Apart」とすんなり繋がる感じがあり、やろうと思えば何時でも出来た事を、ただ自意識が邪魔して出せずに変にアヴァン志向に寄ってしまっていただけなのかも知れないと思ったりもする。