Arca / Kick IIII

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その名もクィア讃歌のM4はFKA TwigsやKelelaに通じるエレクトロニックR&B/モダン・トリップホップで、相対的にではあるが「Kick II」がグローバル・ビーツ、「Kick II」がIDMで、「Kick IIIII」がモダン・クラシカルな側面にそれぞれフォーカスした作品だとすれば、本作は所謂オルタナティヴR&B的なトラックを集めた作品だと言って良いだろう。

アルバム導入部で聴ける管弦楽器のクラシカルな響きは寧ろ「Kick IIIII」に通じるようにも思える。
特にOliver CoatesをフィーチャーしたM2はBjörk作品での仕事を思い起こさせるという意味で、寧ろこれまでArcaがフィメール・シンガー達に提供してきた楽曲に近い作風だと言えるかも知れない。

M4にしろM5にしろ他作と較べてやけに言葉が耳に入ってくるなと思ったら、何の事はないスパニッシュではなく英語で歌われているからで、全体的に歌のメロディもこれまでになく解り易く、歌物/ポップ・ソングを標榜したであろう事は想像に難くない。
M7はまさかのギター・ポップ風だし、M8ではあろう事か凡そArcaとの関連性が想像し難いGarbageのShirley Mansonを迎えているのも示唆的ではある。

それにしても4枚同時リリースというヴォリュームにも拘らず、これだけ各アルバム毎に異なった個性を打ち出せるというのは驚異的で、Arcaという才能の底知れなさを思い知らされる。
やろうと思えばぎりぎり2枚組の単独アルバムとしてリリースする事も出来たところを、敢えてそうしなかったのは大正解に思える。