Young Fathers / Cocoa Sugar

DiscogsもWikipediaもこのバンドをヒップホップにカテゴライズしているが、Death Gripsと同じくらいかそれ以上に猛烈に違和感がある。
M9等は辛うじてBig Dada辺りからのリリースならば未だおかしくないオルタナ・ヒップホップだが、それにしてもラップらしいラップは殆ど無く、あったとしてもお世辞にも巧いとは言い難いし、そもそもそこに力点が置かれているとは全く思えず、歌唱のヴァリエーションの一つくらいの印象しか無い。

ビートにしても不自然な程極端にボトムが弱く、明確にスネアが打たれる事も稀で、ヒップホップらしいサブベースの効いたキック等も全く登場しない。
敢えて言うなら未だしっくり来るのはトリップ・ホップで、Massive Attackとのコネクションも何となく腑に落ちるが、変調された声や躁的で騒々しいヴォーカル/コーラス等、ジャケットが表象するようなユーモアが際立っており、90’sブリストルに通じるメランコリア微塵も無い。

壊れたクラリネットのような音色に乗せて歌われるM1は、宛ら巫山戯たゴスペルと言った趣きで、M5のピアノやコーラスに、M6のオルガン等の音色、M12ではマーチ風のリズム等が、Bon Iverにも通じるクワイア的な感覚を齎しているが内省性は皆無で、螺子の外れた聖歌隊とでもいうようなイメージを喚起させるという点で、崇高且つチープという離れ業を成し遂げている。

一方でM7やM11等のポスト・パンクニューウェーヴ風は、LiarsやTV On The Radioなんかを想起させる(M7はまるで「Wolf Like Me」)という意味でロック・バンドに近く、方やM8のファンクに到っては、Princeを飛び越えて岡村靖幸を思い出させたりもする。
他にもトライバルやR&B等、喚起させるイメージは実に多彩で、凄まじくエクレクティックだが主旋律は至ってポップでフレンドリーという完全にカテゴライズ不能サウンドが全編に渡って展開されており、極めてユニークな存在だと思う。