Yeah Yeah Yeahs / Cool It Down

Perfume Geniusをゲストに迎えたM1と、続くM2に於けるシンセを基調にした他愛の無いアンビエント・ポップはSharon Van Ettenなんかに通じる。
狭義のポスト・パンクをイメージして臨んだだけに、些か拍子抜けする感はあったが、M3〜M5では一転して圧の強いドラム・ビートと大仰でウォブリーなシンセがGang Gang Danceを思い出させる楽曲が畳み掛けるかのように続く。

2022年に入り、Pusha-T「It's Almost Dry」に始まって、Hudson MohawkeにSantigoldとゼロ年代を席巻したサウンド復権を感じさせる作品が多い(そして真打M.I.A.が遂に戻ってくる、が殆どメディアに無視されているのが気に懸る)が、本作もまたそのような時流とリンクした作品である。
それらのサウンドに共通する傾向を大雑把に表現するならば、冗談臭い程の大仰さやチープネスという事になり、それはJockstrapなんかのUKの若い世代の動向とも無関係ではないように思えるし、更にはテン年代的なデプレッションに対する特効薬のように思えたりもする。

もうちょっとフリーキーでエキセントリックを気取ったイメージのあったKaren Oのヴォーカルは、確かにシアトリカルだが、思っていたよりもずっと完成度が高く、最早ベテランの貫禄や円熟味を感じさせる。
曲調に合わせて適切に唱法やデリバリー、声色のキャラクターを使い分けるテクニックには目を見張るものがある。

M7ではディスコ調の印象も手伝ってDebbie Harryを彷彿させたりする程で、そう言えばGang Gang DanceもBlondieもニューヨーク、というのは流石にこじ付けが過ぎるとしても、Karen OもまたNicoPatti Smith以来のニューヨーク・アート・パンクの系譜に連なるアイコニックな女性ヴォーカリストであるのは間違いない。