Foo Fighters / Medicine At Midnight

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アルバム全編に渡って登場するチージーな女声コーラスは流石にやり過ぎの感が否めず、80年代のThe Rolling Stonesみたいで何とも気持ち悪い。
と思ったらインスパイア元はDavid Bowie「Let’s Dance」という事だが、まぁどっちでも良い。
因みにこのバッキング・ヴォーカルにはThe Bird And The BeeのInara Georgeが参加していて些か意外に思えたが、振り返ればNora Jonesとのコラボレーションなんていうのもあった事を思い出せば大して新鮮でもない。

プロデュースはBeck「Colors」を手掛けたGreg Kurstinで、言われてみればパーカッション類の使用等の共通点があり妙に納得する。
ただあくまでロック・バンド的なサウンドの範疇には収まっており、大仰なコーラスを除いては「Colors」のような戦略的セルアウトを感じさせる要素は然程多くはなく、些か中途半端な感は否めない。

ポップに振り切れたという面では「The Colour And The Shape」に良く似ているし、ストリングスの多用等の点では「In Your Honor」を思い起こさせもする。
アコースティック・ギターで始まるM4のイントロは「Learn To Fly」そっくりで、途中でテンポが加速する展開は「New Way Home」を彷彿とさせる。
要するにポップ路線のFoo Fightersで(尤もポップでなかった試しは一度も無いのだが)、「One By One」や「Wasting Light」のような、Dave GrohlとPat Smearのルーツ・オリエンテッドなアルバムではない事だけは言える。

最早パンクやハードコアの名残が微塵も無いハードロックで、これなら「王道アメリカン・ロック」なる、彼等を指して良く使われる形容にも腹落ちする。
つまるところあの退屈なPaul McCartneyの新譜とそう大差の無いサウンドだが、繰り返し聴いている内に然程不快感を感じなくなっていくから不思議なものだ。