Fever Ray / Radical Romantics

無闇矢鱈と人を不安にさせる発声はやはりBjörk直系で、最初は何とかハイパー・ポップの文脈に結び付けて解釈を試みてはみたものの、Charli XCXやCaroline Polachekと並べて聴くには無理がある。
唯一アッパーでレイヴィなシンセ・リフがNew OrderみたいなM7は例外として、要するにアヴァン趣味が強過ぎてポップスとして消化し切れる代物ではない。

M2やM5等で聴かれる戯けたような挑発的な高音域の発声はCyndi LauperかKathleen Hannaかのようだし、M3等のエチオピアン・ポップスみたいなエキゾティックなスケールに乗っかった呪文のようなヒプノティックな歌唱はGang Gang DanceのLizzi Bougatsosを思い出させる。
ついでに偶に発される奇声がYoshimiOみたいに聴こえる瞬間もある。

マニュピレーションによる変調は勿論あるだろうが、とても一人の人間が出しているとは信じられない程の声色の多様性はある種ヴォイス・パフォーマー的でもある。
7分に渡り歌唱未満の発声が滔々と続くM10なんかは正にそんな感じで、何となくLaurie Andersonを連想してしまったりもする。

本作の最大のトピックであるTrent Reznorの関与に関しては、M5後半のノイジーディストーション・ギターや陰惨で沈鬱なムードが「The Fragile」みたいなM8がらしいと言えばらしいものの、その存在感は極めて限定的でプラスにもマイナスにも作用しておらず、何らの影響も無い。
Trent Reznorの何が悪いと言うよりも、偶々通り掛かった訳でもなかろうし、何を求めて態々招聘したのかその意図が良く解らないところに漠然としたフラストレーションを感じる。