Blur / The Ballad Of Darren

Blurの新譜を聴くという行為が実に1995年の「The Great Escape」以来の事で、その後にBlurというバンドが辿った紆余曲折を全く知らないが故に、さぞかし当時のイメージとは違うサウンドが展開されているのだろうと予想していたが、蓋を開けると意外な程にイメージの乖離は小さかった。
当然流石にブリット・ポップ当時程浮かれた感じは無く落ち着いてはいるものの、楽曲の大半を占めるブリティッシュ・トラッド・フォーク的な要素は「Park Life」や「The Great Escape」の頃から見られたものであり意外性は無い。

更にはM2のローファイなファズ・ギターにも、Graham Coxonの例えばPavementといったアメリカン・オルタナティヴに対する憧憬が当時と変わらず表現されている。
但しGraham Coxonの要素が明確に聴けるのはこの曲くらいなもので、アルバム全体としてはDamon Albarnの2021年のソロ作に近いフォーキーなバロック・ポップ調が楽曲の殆どを占めている。

ヒップホップやシンセ・ポップ、ワールド・ミュージックをインプットにしたGorillazとは差別化されているとは言え、Damon Albarnの引き出しから出てくるであろう事は容易に想像が出来る範囲内のサウンドに収まっていて、他の2人は始めから論外だとしても、バンドとして制作する意味が感じられないのは残念ではある。

ともあれ共通点と言えばThe Beatlesからの影響が垣間見える程度のもので、今となってはこのサウンドOasisとの二者択一で語られたあの時代が何とも奇妙に思えて仕方が無い。
その不自然さはブリット・ポップがある種のメディア・ハイプ、作られたムーヴメントであった事の証左にも思えるし、その中心的なストラテジストであったDamon Albarnの胡散臭さが常に付き纏うというのはBlurというバンドが背負ってしまったカルマなのかも知れない。