Gorillaz / Cracker Island

オープニングはシンプルだが腰に来るThundercatのグルーヴィなベースとカッティング・ギターが絡むファンク・チューン。
ここ数作に引き続きシンセ・ポップを基調としつつ、前作「Song Machine / Season One」のポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ色に対して、本作は緩やかにではあるがファンク/ディスコ指向が特徴になっているように思える。

Tame Impalaを迎えたM5は「The Slow Rush」を踏襲するようなサイケデリックなハウス/ディスコ、M7はファニーなピアノが印象的なエレクトロ・ファンクと、Beyoncé「Renaissance」に始まって最近ではJessie Ware「That! Feels Good!」で決定打となったポスト・コロナ時代のダンス熱とリンクするような感触がある。

ティール・ドラムとスライド・ギターの音色が熱帯の蒸せ返るような空気感を醸し出すM3や、ソン・クラーベのリズムがブリージンなM8等のアフロ・カリビアンを中心としたエキゾティカ、カントリー調からDevoを連想させるようなエレクトロ・パンクに展開するM9等のエクレティシズムも健在で、「The Tired Influencer」なんていう時事問題への風刺的なタイトル・センスには相変わらず恥ずかしいものがあるけれども、少なくともBlurの新譜よりも単純に楽しめる。

タンゴ風のM10も嫌いではないけれど、相変わらずBeckの使い方が勿体無い。
前作のSt. Vincentの場合もそうだったが、わざわざBeckを参加させておいて誰でも代わりが利きそうなコーラスに追いやった挙句、自分が前面に出て歌うというその強心臓が解らない。
Damon Albarnにシンガーとして期待を寄せている人間等誰一人としていないというのに(流石に言い過ぎか)。
この自己顕示欲さえ無ければもう少し素直に評価出来そうなのだが。