Sampha / Lahai

先ず耳に飛び込んでくるのはM1やM2、M10等のドラムンベース風のブレイク・ビーツで、その生ドラムの音色はアルバム全体に渡って存在感を放っている。
特にSpeakers Corner QuartetのメンバーでもあるKwake BassやYussef Dayes等のサウス・ロンドンのジャズ・シーン周辺で活躍するドラマーの貢献は大きいように思われる。

と言っても単純にドラマーのスキルにだけ依存しているという訳ではなく、例としてM14等が解り易いが、生のドラミングと電子音のプログラミングとが不可分に一体となって、精巧なビートを組み立てている。
M2等の複雑なビートは流石のYussef Dayesと言えどもとても人力のみとは考え辛く、「Process」に較べるとSampha自身のビート・メイキング技術も相当に向上しているものと思われる。

上音の方は相変わらずピアノが中心で、前作には「(No One Knows Me) Like The Piano」なんていうタイトルの曲もあったくらいなので、余程の拘りがあるのだろう。
そこにコーラスやストリングスやエレクトロニクスで補強・装飾が施されたサウンドは前作から引き続きといった感じで、少々フェアではない気もしなくはないが、廉価版のJames Blakeといった元々の印象が大きく覆る事はない。

他の音色面の特徴としては、多くの曲でSampha以外の人間の声が断片的に用いられている点が挙げられる。
コーラスと言う程には曲を補完していないし、スポークン・ワードと言うには断片的過ぎるそれら声は、M2の最後の取って付けたかのようなYeajiのハミングに顕著なように、偶々録音に紛れ込んでしまったかのような佇まいで、ジャケットに映る少女のイメージと被る事からも、何らかのコンセプトがあるのかも知れない。