Jockstrap / I<3UQTINVU

本作はリミックス・アルバムと言われているようだが、実際には「I Love You Jennifer B」の音源のセルフ・サンプリングで構築されたリコンストラクトと言う方が正しいように思える。
その結果は断片的で本編以上にスキゾフレニックではあるが、(知っている曲が元だから当たり前なのだが)耳馴染みが良くかなりポップ。

本編よりもダンス/クラブ・ミュージック的な要素が強いのも特徴で、M1はFatboy Slimのビッグ・ビートとJusticeのフレンチ・エレクトロのマッシュアップのよう。
90年代にJon SpencerやRoyal Truxがロックンロールをネタにしたのと同様のセンスでエレクトロニック・ダンス・ミュージックをメタ・フィジカルに扱っているような印象で、そう考えればレイヴのクリシェの権化のようなSkrillexを褒め称える感覚も理解出来なくはない。

偶々久々にM.I.A.の2010年作「Maya」を聴いた後に続けて本作を聴く機会があったのだが、余りに連続性と言うか共通する感覚があって驚いた。
(ノイジーでサブベースの音圧が過剰なM7なんかは特に。)
「I Love You Jennifer B」を聴いて最初に連想したのはSleigh Bellsだったが、時代が一回りしている事を考えれば、そろそろその辺りのサウンドが再評価の対象になってもおかしくはない。

それらの感覚を言い表すとすれば、「軽薄なラディカリズム」或いは「ラディカルな軽薄さ」という表現が思い浮かぶが、そこにどちらかと言えば硬派な印象のあるCoby Seyが絡んだりするから現在のUKのシーンは面白い。
ところでそのジャンル横断的なネットワークの元を辿ると、ハブになっているのは実はMica Leviなのではないかと思ったりしたのだが、実際のところどうなのだろうか。