The Smile / Wall Of Eyes

M1の優雅なストリングスは「A Moon Shaped Pool」との連続性を感じさせ、最早Thom YorkeとJonny Greenwoodの2人が何をやろうと、過去のRadioheadの作品や楽曲を連想させてしまうというのは実に難儀な話ではある。
Radioheadというバンドの偉大さの裏返しであるのは間違いないが、最早トラップでもやらない限り新鮮味を得るのは難しいのかも知れない。
(物の例えであって、聴きたいという事では全くないが。)

「Hail To The Thief」以降は次のアルバムまで4〜5年、「A Moon Shaped Pool」からは早く7年が経過している事を考えると、2年という短いスパンで新作を出せる程、Thom YorkeとJonny Greenwoodにとってのこのプロジェクトが気軽なものだという事だろう。
このアルバムがRadioheadの名義で発表されたとしても、拍子抜けこそするかも知れないが、失望するファンは少ないだろう事を思えば、Radioheadの名前に誰よりも重圧を感じているのはそのメンバー達で、課しているハードルの高さが推し量られる。

相変わらずCanかNeu!みたいなM3やM4からは、事前に入念に作り込まれたコンポジションを基にしているというよりも、スタジオでのジャム・セッションやインプロヴィゼーションを発展させて楽曲が組み立てられているものと想像される。
Philip Selwayがテクニックの面でTom Skinnerに大きく劣るとは思わないが、現場での突発的なアイデアやその引き出しの多さには多少なりとも差があるのだろう。

冒頭から5/4拍子と、特にリズム面での捻くれ具合はこのバンドのアイデンティティとも言え、Thom YorkeとJonny Greenwoodが純粋にTom Skinnerとの共同作業を楽しんでいる様子が伺える。
ある意味で趣味的とも言えるが、それでこのクオリティには唸らされる。